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Ⅴ─水瓶と沈んだ記憶─

こんにちはm(__)m

シリアス&バトルの含まれる回です。

個人的に一番好きな話かもしれません。

お楽しみいただけると嬉しいです。


「遊ぼうぜ……アリス!」

犯人・アクアリウスが楽しそうに言い、指を鳴らした。

すると、彼女の長いポニーテールが揺らめき、うねり、変形した。

長さも倍増したそれは、水のように透き通っていた。

アクアリウスは大きく飛び上がり、回転の動きを作った。

その瞬間、リエが慌てる。

「危ない!」

彼女は叫ぶと、アンと穣、そして銀色の球体を抱えて移動した。

間一髪だ。

回避したリエの数センチ後ろを、ポニーテールが通過した。

「あの水の鞭……危険です」

「光速で移動する能力……"アクティナ"か」

アクアリウスの呟きに睨まれるような感覚を得た。

アンは自らの身を抱き、恐怖に戦慄き震えていた。

彼女の満面の無表情は見る影もなく、しかし変わらぬ強い意志を感じさせられる瞳がアクアリウスを睨んでいた。

「我の代わりに勇気となれ……!」

震える声で放たれたその言葉に、異変が起こった。

足元に転がっていた鉄パイプなどの廃材が、空中に浮かび上がってきたのだ。

それはアクアリウスへと向かっていくが、鞭に払い落とされてしまう。

「負の感情を凶器に変える能力……"ダクリュ"の使い手か」

言いつつ、アクアリウスは油断しない。

と、彼女はポケットから何かを取り出した。

それはビー玉ぐらいの大きさの、青い球体だった。

「それって……第2の宝玉じゃないですか!?」

焦りの混じったリエの声に、アクアリウスは笑った。

「正解♪」

それを握りしめ、再び髪を振り回す。

今度は回避すら間に合わなかった。

リエの背中に、傷が生じた。

「リエ!」

アリスの声が響く。

球体の向こうから、何かを擦り合わせるような音が聞こえた。

穣にはアリスの気持ちが痛いほど分かった。

分かってしまった。

たった1つ、石が盗まれたぐらいで何もできなくなって。

仲間を頼ったくせに、ろくに協力もできなくて。

傷ついていく仲間を、親友を、ただ通信機の向こう側から無力に眺めているだけで。

でも、結局何もできなくて。

そんな自分が嫌になるのだ。

「もう、いいわ……」

アリスの声がそう告げた。

アンが青ざめる。

言いたいことが予想できたのだ。

「アリス!」

「いいのよ……もう。撤退しましょう」

弱々しく言った彼女の声に、穣の中で何かがプツンと切れた。

彼は思い出す。

あの日のことを──。


いい天気で、穏やかな暖かさの日だった。

優しい家族に囲まれていた。

中学校に入ったお祝いに、と買い物に行く途中だった。

そんなときに、悲劇は起こってしまった。

交通事故だった。

母と父は身を呈して穣を守ったが、その代償として2人の命の灯火はあっけなく消えてしまった。

燃え盛るガソリンの中に紛れて、灰になってしまった。

事故の瞬間、父が言っていた言葉を、不気味なほど鮮明に穣は覚えている。

優しくて、少し面倒くさがりだった父の遺言は──。


『いいんだよ……もう。俺の分まで、お前が生きろ』


「……よくない……何もよくない!」

穣の叫びに、その場にいた全員が振り向いた。

「取り戻さないと、アリスは死んじゃうんだろ!?俺はもう……大切なものを失いたくないんだよ!」

アリスが息を飲む。

穣は床を蹴る。

自分には何もできない。

でも、何もしない奴にはなりたくなかった。

アクアリウスは驚きながらも、至って楽しげな表情で髪を揺らす。

勢いよく迫る水の鞭に目を瞑った瞬間だった。


穣の姿は、視界から消えた。


いかがでしたでしょうか?

さて、次回が最終回となると思います。

お楽しみに!……なんちゃって(笑)

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