『おはよう』
これは二部制です。
ぜひとももう一つの『おやすみなさい』も見てください。
まぁ、たいして内容は変わりませんけども・・・。
突然だが俺の昔話をしよう。
当時の俺のタイプの女は、いつも俺の後ろ斜めを半歩でついてくるような女だった。
慎ましい大和撫子というやつだな。
そして性格は男を立てる人が最適だ。
俺が仕事で帰ってくると風呂と飯が用意されており、俺が何も言わずに飯を食っててもそれを見るだけで微笑むような女だ。
傍から見れば都合の良い女に見えるだろう。
だが、例えば風呂などでは「一緒に入りませんか?」などと嬉しい我儘を突然してくるような女ならどうだ?
俺はそれくらいのわがままを見せる女が良い。
そして次に見た目だが、これはもちろん黒髪の長髪だ。
癖になってることもなく、真っ直ぐになっていると尚良し。
髪の艶は有っても無くても構わないが、できればある方がいい。
そしてそんな夢見がちな14歳の時だ。
俺の人生に転機が訪れた。
俺に許嫁ができたのだ。
俺の親と彼女の両親が知人らしく、それで許嫁が決まった訳だ。
そしてその許嫁が決まった時に彼女と初めて出会ったわけだが…。
一目惚れした
一目惚れなんてするような奴は外見しか見てない証拠だ。
俺は当時、そう思っていたのだが…。
彼女は俺の理想と丸っきり同じ姿をしていたのだ。
これは一目惚れをしても仕方ないと思わないか?
日本美人という物をそのまま表したかのような容姿に、赤い紫陽花の着物、そして穏やかさを感じさせる瞳。
そして彼女は内面も俺の理想通りだったんだ。
彼女と会った次の日から一緒に学校に行くことになったのだが…。
俺とあまり干渉しない、だが常に一緒にいる、だが弁当を作ってくれる、そして微笑みかけてくれる。
俺は彼女と学校生活を始めてからすっかり彼女の虜になっていた。
そういえば、学校生活で思い出したのだが…。
一回だけ彼女を怒らせてしまったことがあったな。
原因はイジメだ。
子供というのは周りとは違うものを淘汰したがるものだ。さらにそれがひ弱であれば尚更。
当時、許嫁がいるというのは珍しい事で、彼女はイジメの被害にあっていた。
しかも性質の悪いことに俺の見えないところで…だ。
だが俺はある日、彼女がイジメられているのを見てしまった。
そして彼女に覆いかぶさるようにして庇った。
その時、イジメている本人を殴ろうかという考えもした。
だが俺が殴ったせいで、俺の知らないところで彼女が余計に殴られるかもしれない、そう思うととても殴る気にはならなかった。
その日の彼女と一緒に帰る時、彼女はずっと俺に謝っていた。
今でも、どうして彼女が謝っていたのかがわからない…。
やはり俺には乙女の気持ちというのは分からないのだろうな。
そして俺が彼女を家まで連れて行ったあと、俺は今までの人生で一番の頑張りを見せた。
俺はイジメをしていた人間の家に片っ端から乗り込んでいき、もうイジメはしないという約束を取り付けたのだ。
まぁ、やったことは殴られることだけなのだがな…。
でも俺は、そいつがもうイジメないと言うまでずっとそいつにしがみ付いて、離さなかった。
あぁ、今思い出してもアレは今までで一番頑張っていたと思う。
翌日、彼女は俺に何をしたのかと彼女にしては珍しいことにかなりしつこく聞いてきた。
だが答えなかったさ…。
男としてかっこつけたいという気持ちもあったが、彼女に罪の意識をさせたくなかったからだ。
彼女は優しい、いや、優しすぎるんだ。
きっと俺が家に帰る頃には満身創痍だった…なんて知ったら彼女はずっと俺に笑いかけてくれなくなるだろう。
彼女はそんな女性だったのだ。
今、俺の隣では彼女が寝ている。
40歳になった俺は彼女の為に今日も汗水垂らして働くわけだ。
彼女はいつでも俺に尽くしてくれる。
だから俺はそんな彼女の為に俺の全てを捧げたい。
「ん…」
どうやら彼女が起きたようだ。
そんな彼女に俺はいつもの挨拶をする。
いつもありがとう、そしてこれからもよろしく。
そんな思いを込めて彼女に言う。
『おはよう』と。




