表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おんな拳銃無頼  作者: ガンアクションだいすき
9/23

〝荒事専門〟


「こいつはすごい……」

 ――…フレームは、銃身および弾倉(シリンダー)のある上部と、撃鉄と引き金の機構、それにグリップのある下部とに分割されている。

 それが発砲の反動を利用して自動的にコッキング(装填と撃鉄起し)するための構造だろうことは、ほぼ同じ動作機構を持つシングルアクション・リボルバー――ウィーズリー=ターナー工房製セルフコッキング・オートマチック・リボルバー…――を使うオレリーの専属機械士のようなエミールには自明だった。シングルアクションのトリガー(引き金)動作はハンマー(撃鉄)を撃発させるだけ。ストローク(機械的行程)が短くて軽くなる利点のため、手ブレが小さく精密射撃に向いている。


 見れば見るほど惹き込まれる。まるで工芸品のようだ。組み上げの精度が尋常じゃない。

 解せないのは、傷の見当たらないフレームには、シリアルはおろか工房の刻印ひとつ入っていないことだ。ジップ・ガン(密造銃)とは到底思えない造りだが……。


「これは……銘も刻印も見当たらないけど?」

 訊くべきかどうか迷ったものの、けっきょく訊いてしまったエミールに、マルレーンは屈託なく応じた。

「ごめんなさい。いつ、どこで造られたか……型番もわからないの」

「こんな見事な造りの銃なのに? じゃ、〝名称(なまえ)〟すらわからないのか……」

 心底から残念だ、というふうになったエミールに、

「〝レーリチ〟よ」 マルレーンは応えた。

()の持ち主の名前……それだけはわかってるの。だから――」

 言葉を切って頷いてみせる。……どうやら〝(いわ)く付き〟らしい。


「君ら()、荒事専門の〝流れ〟なのかい?」

 話題が深いところに落ち込んでいってしまう前に、ドクが横合いから話題を変えた。

 〝荒事専門〟の言い様に、エミールが返事に窮してオレリーを向く。視線を交わした後に、彼女が応えた。

()()()つもりもないですけど……。フロンティア(中部辺境)には、道理なんて()()って人間も多いですから――」

 言葉尻を拾うようにドクが訊く。

「――〝降り懸る火の粉〟を払うのはやぶさかじゃない?」

 〝ええ〟とオレリーは肯いて返した。

「なるほど」 ドクはくぃとグラスを呷った。「それであの腕前か……一応、納得することにしたよ」


「おふたりは〝荒事専門〟なんですか?」

 逆にそう訊き返したのは、一通り見回して満足したらしく〝レーリチ〟を現在(いま)の持ち主の手に戻したエミールだった。

「まあ、そうだね。……僕らはバウンティハンター(賞金稼ぎ)だから」

 エミールはオレリーと目を見合わせた。医者が本業だと彼の口から聞いて()()然程時間は経っていなかったが、当人にとっては医業と賞金稼ぎ、この二つの職業は両立できるものらしい。


「……()()でも〝荒事〟を?」

 エミールは、探るような声にはならないように、さり気なく訊く。

()()〝そういう話〟にはなっていない」

 ドクも同じように、さり気なく、という感じに応じた。

 それから、にっこりと笑顔になって、どこまで本気かはわからなかったが、満更でもないように聞こえる声で言ったのだった。

「でも、そうなったときには、ぜひ一緒にやりたいね。すごく楽ができそうだ」

 と――。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ