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おんな拳銃無頼  作者: ガンアクションだいすき
8/21

皿の上の大砂トカゲ


 とりあえず食の進まぬオレリーを除く三人によって、皿の上の大砂トカゲは()()()()()()()解体されていった。マルレーンも、男ふたりに負けまいと、絶妙な焼き加減の肉に(かぶ)り付いて健啖家(けんたんか)ぶりを発揮したのだった。


「それで、〝ドクター〟・ア()チェカ()ロ…――」

 メインディッシュがほぼほぼ空になるのを見計らって、オレリーは男の〝流れ〟の方に話しかけた。珍しい響きの連なる彼の名に、発音の方が少々怪しくなる。

「――アチェカルロ……」 さり気なく訂正された。「〝ドクター〟は何だか堅苦しいな……。僕のことは〝ドク〟と」

 そう言って微笑みかけてくれた三十男は、バウンティーハンター(賞金稼ぎ)生業(なりわい)の〝流れ〟には到底思えず、やはり〝ドクター〟の方が相応しいのではとオレリーには感じられた。が、本人の願いに従うことにする。


「それじゃ〝ドク〟…――おふたりはいま、何か〝依頼事〟を?」

 一足先に(ルズベリー)に着いていた二人は、もう何かロータリから〝依頼事〟を斡旋されたのだろうか。そんなことが〝渡り〟である彼らにとって、当り障りのない話題といえた。

「ええ。とりあえず〝野良仕事〟を幾つか」

「野良仕事……?」 と小首を傾げるオレリー。

「そ。町外れには何件か農場があってね。冬支度前の秋だし、仕事はいろいろと……。じつは昨日も、コラル(家畜囲い)で飼葉の荷下ろしをしていて、それで君のボトルトスを観たんだよ――…〝6本のボトルに乾杯〟」

 ドクは(かじ)っていた大砂トカゲの肉片を小皿に置き、ワイングラスを掲げてみせた。

「……でも〝ドク〟は、ほとんど何もしてくれてないんですけどね」

 横合いから、肉片を頬張っていたマルレーンが割り込んだ。ドクは苦笑いとなる。

 それからドクは、空になったグラスにワインを注ぎ、オレリーにも〝注ごうか?〟と目で訊いた。オレリーは小さく手を振って断った。


 と、彼女は、エミールが先ほどからマルレーンの顔をチラチラと窺って、何か切り出そうとしていることに気付いた。それでバツの悪い表情(かお)になって、コホンと咳払いをする。

 それを耳で拾ったエミールは、慌てて首をまわして、何とも言えない表情を返した。

 マルレーンは、そんなエミールとオレリーにくすりと笑って、ナプキンに手を伸ばすと丁寧に手を拭い、(おもむろ)に腰のホルスターに手を遣った。

「――…〝渡り〟のお(にー)さんが気になるのは、()()でしょ?」

 得物を抜き出すと銃把を向けてエミールへと差し出す。エミールの視線が銃へと移動するのを確認して、

()()()()は掛かってますよ。どうぞー」

 と、笑顔で言った。



 ブルースチール(青焼き処理)の深い光沢を放つ6連発リボルバー(回転銃)は、それまで見てきたどの銃よりも洗練されモダン(現代的)な造形をしていた。それに、溜息が出るほど美しい。

 短めの3インチ銃身(バレル)は、一般的なリボルバーよりも〝下側〟にある。

 多分、発砲時の跳ね上がりを抑えるため、通常のリボルバーとは弾倉(シリンダー)に対する銃身(バレル)の位置を逆の――弾丸は一番下の薬室(チャンバー)から発射される――構造にしたのだ。銃把(グリップ)と銃身の高低差を減少させることで手の位置と銃身の位置を極力一致させようというのだろう…――。

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