笑顔のままに
「こんにちわー」
扉を開けたエミールの視界に入ってきたのは、〝向日葵のような〟色合いの長い金髪と笑顔だった。
女性……それも〝すこぶるつき〟の美女といえた。年の頃は二十歳のエミールと同じくらい――オレリーよりは年長か……。
緑がかった灰色の瞳が、決して背が低いということのないエミールの目線とほとんど同じ位置にあって、にっこりと笑いかけてきている。
「あ、あの……」
もちろんエミールに面識などあろうはずもなく、怪訝となって見返したのだったが、彼女は笑顔のままに小首を傾げてきた。
「こちらミス・ラングランとミスター・デュコのお部屋、ですよね?」
そのまま部屋の奥の方へと、覗き込むように視線を潜らした彼女は、エミールが困ったような表情になったのに気付くと、目線をエミールの顔に戻して右手を差し出してきた。
「わたしマルレーン・ソーメルスです。噂の〝女渡り〟のひとりです」
――…そういえば、週初めにももう一組、〝男女二人組の渡り〟が町に辿り着いてる、っていう話を聞いてたっけ。
気圧されたように差し出された手に視線を落としたエミールだったが、その右手の先に使い込まれたホルスターを見て興味を引かれた。そんなものに目がいってしまうのは、彼が機械士だからだ。ホルスターからチラと覗いた彼女の得物が尋常な物でないことに、エミールは気付いている。
そんなエミールにもう一度マルレーンが小首を傾げたとき、奥の間からオレリーの声がした。
「エミール。廊下での立ち話も何だし、入って頂いたら」
「あ、いえいえ――」 マルレーンは手のひらをパタパタと振って応えた。「下で連れがお昼をご一緒に、と待ってるんです。いかがですかー?」
天真爛漫を絵に描いたような声で、奥の部屋のオレリーに聞こえるように訊く。……どうやら悪い人間ではないようだ。その声でエミールは判断した。
昼食どきのホールの卓上には、丸焼きにされた大砂トカゲがドーンと載せられていた。
「…………」
大砂トカゲは美味で、良質の蛋白質を供するご馳走なのだが、4フィート(1.2メートル)もあるとかげとかげした爬虫類がそのまま皿に載っていれば、うら若いオレリーのような娘ならずとも、言葉がなくなろうというものである。
それが幸なのか不幸なのか、大砂トカゲの頭部は、破壊的な打撃力――おそらく大口径のライフル銃弾によるもの――によって半分千切れ飛んでいて、原形をとどめていなかった。
「いやあ、折よく大物を仕留めることが出来たので、これはぜひ振る舞わねばと。ここの店主の料理の腕はなかなかですからね。きっと美味いですよ」
上機嫌でそう言った三十搦みの男が、マルレーン嬢の連れだった。オレリーは知りようもないことだが、コラルから件のボトルトスを見ていたあの男である。
年季の入ったベストを纏い眼鏡に無精髭……、それでいて不潔というような印象は受けなかった。たぶんインテリなのだろうと思っていたところ、「〝ドクター〟・アルベルト・ビエルサ・アチュカルロ」と自己紹介された。〝流れ〟だが、医師が本業という。