スカートの裾を翻し
オレリーとマルレーンは、エントランスの大きくて立派なドア越しに外の気配を窺い、その扉を開けるタイミングを計っている。
とりあえず、正面に敵の気配はない。
オレリーはさっき撃った1発だけ空となった薬莢を抜き取ると、新しいものと取り換えた。これで6発。シリンダーを戻してハンマーを起こしなおす。
――そろそろ1分……。
マルレーンと目線を交わし、ドアへ手を伸ばしたそのとき、銃声が起こった。
最初の2発はドクが放った。彼のM2887はダブルアクションだ。トリガーを引くだけで連射できる。
なにを狙うでもなく、ただ窓から銃口だけを覗かせてのブラインドショット――。
狙いの通りに、ドクの脇の窓に応射の火線が集中した。
その銃声が遠くなると、お次はバーニーが窓に姿を晒して左右1発ずつを放ち、そしてすぐさま身を翻して壁に身を隠す、ということをしてみせ注意を引き継いだ。
すると数秒後――。
今度こそ二階全体が激しい銃撃に曝されることとなった。〝制圧射撃〟…――ドクの思惑通りである。
ラーキンズとエンシーナスは、一階正面に手勢を進めるためにそれをさせた。
だからいま銃撃は二階の窓に集中し、対してエントランスのある一階正面は、突入しようという手勢によって射線すら遮られた状況だ。
オレリーとマルレーンがエントランスから躍り出たのは、そのタイミング…――
ドアの向こうには5人の男が〝いま当に飛び込もう〟としており、出合い頭であった。
先にドアを出たマルレーンは、いきなり目の前に飛び出してきた人影に腰の引けた3人の保安官助手に、自身は動ずることなく、淡々と、それぞれ1発ずつの銃弾を撃ち込んだ。
オレリーは、その直後に腕を畳んだ左肩を前にドアを出てくると、左の側から進んできたレンジャー2人のヴィンチェストカービンの銃口が目線の位置まで引き上げられる前に、速射2発でそれぞれの肩を射抜き〝無力化〟した。
二人が〝その場を逃げ出す〟のがわかるオレリーは、トドメは刺さず、彼らのするのに任せる。
そうして隙の無い構えのままマルレーンの横に並ぶと、銃声の止んだ大路を見渡した。
目指す〝標的〟――ラーキンズ保安官とエンシーナス大尉――は、30ヤードほど(27メートルくらい)行った先の通りの向かい、トリウマ車を倒した急造のバリケードの影にいた。
周囲にはヴィンチェストカービンを構えるレンジャーが5人と、ライフルやらSASSやらを手にした保安官の助手、賭博場の自警団といった手合いが合わせて12人ばかり。
さらに加えて、そこまでの大路のあちらこちらにも、トリウマ車やトリウマ繋、あるいは酒場の店先の樽、葬儀屋の軒先に積んで置かれた棺などの物陰越しに、少なくとも14、5人が銃を覗かせている。
大路を収めた視界の中で三十からの銃口が動き出す。
マルレーンがスカートの裾を翻して正面に踏み出し、オレリーは凛と背筋を伸ばして少し左に寄って立った。




