「勝機?」
マルレーンが、銃声の遠ざかっている束の間、オレリーの顔を見て何度か頷いている。
「なるほどなるほど……」
「なにが〝なるほど〟?」
周囲に気を配るオレリーが目線は向けずに訊く。それにマルレーンは、最後に大きく頷いてから応じた。
「これで勝機が見えてきましたね」
「勝機?」
オレリーが慎重な声音になって訊き返す。
「ええ。あなたとわたしとなら、打って出ていって保安官と隊長さんのところまで辿り着くことができます、きっと」
「…………」
オレリーが〝どういうこと?〟と黙して促すと、マルレーンはぶつぶつと続けた。
「わたしとあなたの6発ずつ、これで12発。ぷらーす、あなたとならきっとリロードの隙だってカバーし合える。だから18、……上手くやれば24…――」
「…………」
ひとり1発という計算なのだろうか……。
その余りの能天気さに言葉のないオレリーを横に、マルレーンの方は大まじめに銃を持たない左手で指折りはじめる。
「――外を囲んでる〝手下さん〟たちは30人くらい。もう13人は退けちゃいましたから、残りざっと15、6人……」
「……もう少しいるわ」
一応、オレリーは〝数合わせに〟に関しては指摘した。
「んー、でも」 マルレーンはにっこりと応じた。「……全員退けなくても、保安官と隊長さんに銃を突き付ければ、それでけりは付いちゃいますよ」
さすがにどんな表情でそんなことを言っているのか確かめたくなって顔を向けると、マルレーンの真っ直ぐこちらを向く目と目が合った。
それでオレリーも悟った。――どうやら本気らしい、と。
「……エミール。二階に行って援護するよう伝えて。1分後にわたしとミス・ソーメルスが正面から外に出る」
「あ、ああ……。わかった」
エミールは肯くと、階段を三度上がって行った。
「1分後、ミス・ラングランとミス・ソーメルスが建物を出る」
応接室に戻ってくるや、エミールは窓際の壁に張り付いて外の様子を窺うドク、バーニー、バリーらに告げた。
「援護する」
言って、正面に向いた窓の脇まで進むと、そこからの射界を確認する。オレリーは時間に正確な性格で、あと30秒もすれば始まってしまう。
「外に⁉ おい、そりゃいったい…――」
「――むちゃよ! 何を考えてるの、あの娘たちは」
想定外の成り行きにバーニーが何事かと質そうというのをC.C.が鋭く遮った。
オレリーとマルレーンの〝特異な才能〟を認識していない彼女(……先のオレリーは、ただ運が良かっただけくらいに理解した)は、オレリーらの無謀に、怒ったような声を上げたのだった。
その中で(エミールと同じく)彼女らとの付き合いの長いドクは、長銃身で取り回しが悪く、1発ずつしか発射できないトラップドアを壁に立てかけると、クロスドローのホルスターからシルトM2887を引き抜いて応じた。
「先ずは正面から注意を逸らせばばいいかな。……その後は?」
「彼女たちから見えてない奴を撃つ」
二人の口振りから、どうやら〝勝算〟あってのことらしい。
バーニーはそのときに備え、両手の銃のハンマーを起こした。




