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おんな拳銃無頼  作者: ガンアクションだいすき
3/26

それはまるで雷鳴のように


 髭面男の挑発に(内心嬉々として)〝ボトルトス〟でと応じたオレリーは、町の外れまで歩いて行くと、6本の酒瓶が空中に放り投げられるのを、固唾を呑んで見守る野次馬たちとともに待つこととなった。

 これは早撃ちの遊びで、合図とともに放り投げられた酒瓶を、クイックドロー(早撃ち)で空中にあるうちに撃ち抜くというものだ。利点は、人が死んだり怪我をしないこと。

 それでも実弾を使うので流れ弾で怪我人が出ぬよう、野次馬たちは、銃口の向くことのないオレリーの背後に、十分に距離を取って退けさせられている。


 町を背に荒野の方を向いて立つオレリーの左右の視界の端には、(くだん)の髭面男の取り巻き男ふたりが、右手に1本、左手に2本、それぞれ酒瓶を握って立っている。

「準備はいいかい、嬢ちゃん」

 右の端の男が確認した。その表情(かお)は〝無茶に挑戦している身の程知らずな小娘に向けるそれ〟。――…普通の男なら1本当てればたいしたもの。〝渡り〟なら2本撃ち抜く者もいるだろう。3本なら達人だ。それを()()()()()6本だなどと。同じ表情(かお)を、町長と保安官もしていた。

 だがオレリーは「ええ」と応え、瓶が放られる荒野の方を向いた顔の顎を引いて合図を待った。6本という数は、彼女の方から指定したのだ。


 左足を前に出した半身の構え。

 ほどよく使い古されたガンベルトは、流行遅れ(オールドファッション)な旅行ドレスの(くるぶし)の覗く短めの丈の釣鐘型(ベルシェープ)のスカートの上に巻かれている。やや大きめのホルスターの位置は左腰のクロスドロー(利き腕の反対側側面)。右手はグリップ(銃把)を握り、左手はホルスターの上に軽く添えている。得物(えもの)は……判らない。


「〝3〟でいく。高さは20フィート(6メートル)だ――…」

 緊張感が高まってゆく中、髭面男の野太いが宣言した。左右の男が肯いて返す。野次馬の声も治まってゆく。

「〝1〟……〝2〟……、〝3〟!」

 合図で、酒瓶は20フィートの高さ――それは概ね2階の高さだ…――に放られた。

 6本の瓶が、次々と最高点にまで昇っていく。周囲の野次馬の視線も、それを追って宙へ向く。色とりどりのガラスの瓶が、秋口のまだまだ強い陽光を反射して光を放った。少し眩しい。

 この時点で銃声はまだ無かった。銃の扱いに()けた者の中には、失望の念が広がったかも知れない。

 通常ボトルトスでは、的の酒瓶が最高点に達する前後を狙うのがセオリーだ。速度が消され動きが止まって狙いやすい。頂点までいってしまえば、あとは落下に転じ速度を乗じていくだけ……。狙いも(まま)ならなくなる。


 女――…それも年端もいかない少女とはいえ、仮にも〝流れ〟なのだから、せめて1発なり引き金を引くだろうと思っていたのだが……。

 落下に転じた瓶を目で追う野次馬の中には、そんなふうに思う者も多かったろう。

 もう瓶は、地面まで3~4フィート(1~1.2メートル)の高度にまで落ちて来ている。


 銃声がこだましたのは、そのときだった。

 1発ではない。重なって連なって、それはまるで雷鳴のように轟く――。


 周囲の野次馬が()()が銃声であることに気付いたときには、6本の酒瓶は6本とも粉々に砕け飛んでいた。

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