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おんな拳銃無頼  作者: ガンアクションだいすき
29/41

「…〝正義〟のためです」


 バーナビー(バーニー)・デイヴィスが振り子時計(ペンデュラムクロック)の置かれたホールに再び姿を現わしたのは、きっちり丸一日が経過した頃だった。


 C.(カルメーラ)C.(キアラ)デル=ペッツォ法務官補と共に現れたバーニー法務官助手は、

「これから町長の邸に出向くが、君らはきっちり30分後に、後から訪ねてきてくれ」

 と、いきなり勝手なことを告げたのだった。

 要領の得ないエミールが、隣に立つC.C.の顔を見ると、彼女も同じような表情で小さく肩を竦めて返すばかりだった。彼女も何も聞かされていないのかもしれない。

 バーニーは構わずに続けた。

「ああそれから、バッカルーからはひとり……そうだな、あの若いガンスリンガー(拳銃使い)だけ、一緒に来てもらってくれ。他は、まぁ……(役に立たんだろ)」

 そう言ってその場を後にしたのだったが、ホールを出て行きしな、まだ昨日のことを引き摺っている節のオレリーを目に留めると、

「…――ミス・ラングラン。そんな(しお)れた表情(かお)じゃダメだ、顔を上げろ。どんな失敗だって取り戻せない失敗なんてない」

 そうして派手なウィンクを彼女に残し、スイングドアを押し開いて出て行ったのだった。


 バーニーの言葉を反芻しながら彼の背中を見送ったオレリーは、エミールの視線に気づくこととなった。

 ばつの悪いオレリーが、これはどんな表情を返すべきか、と思いあぐねるうち、エミールが黙って頷いてきた。

 それで彼女も、黙って頷いて返す、ということで済ませられた。

 ――取り戻せない失敗なんて、ない。

 どうやら、()()()()なんてしている暇はなさそうだ。




 邸の応接室に通されて20分あまりが過ぎ、C.C.は、邸の主人(あるじ)と自分の上司の直属の部下との間のやり取りが、いよいよ佳境を迎えつつあることを感じ取っていた。


「……よくわからないが、なぜ私がカウペルス巡回判事とエンシーナス大尉を告発しなければならないのかね? 君は、彼らがバッカルーとの係争を恣意的に扱っているというが、そんな証拠はどこにもないだろう? そもそも正式には調停に持ち込まれてないと記憶しているのだが…――」


「――〝正義〟のためです」

 バーニーは町長の息継ぐタイミングを見計らって口を挿んだ。そうして〝何とも言えぬ表情〟となった町長を面白がるふうに、

「……なんて〝野暮〟はいいません」

 などと、目を閉じ肩を竦めて前言を翻してみせた。

 そのレンジャー隊員にあるまじき態度に、隣でC.C.が、しかつめらしく口許を引き結んだ顔を顰め俯いた。

 そんな役職上位者の様子をも面白がるふうに、バーニーは続ける。

「そうしなければ、あなたの立つ瀬がないからですよ」


 どういうことだ? という視線を町長が向けてきたところで、メイドが更なる来客を告げた。


 ――時間通り。

 バーニーは町長の顔を見遣ると、頷いて、

「我々が同席するよう呼び付けました。どうぞ上げてやってください」

 と、新たな来客への応接を促した。

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