寄ってたかって
けっきょくオレリーは、施す術なくあの場を引き下がるより他になかった。
二日の期限を切られて町を追放となったバリーとペインの身柄を引き受け、ロータリの入る酒場へと戻ってくると、野良仕事から戻ってはじめて事態を知ったマルレーンとドクと、先にエミールに呼びに行かせたカウボーイを前に、エンシーナス大尉との対面の顛末を話して聞かせた。
エミールとドクは憮然とした面持ちで、マルレーンは納得のいかぬ面持ちで、それをバッカルーと一緒に聞いた。
聞き終えたバッカルーの表情は、皆一様に消沈したものとなった。無理もない。この一年の働きの所産であった牛の権利を全て失うことが確定したのだ。
恃みのレンジャーまでが共謀に加わっていたとなれば、これでバッカルーの元に牛が戻る望みは完全に無くなった。……いや、最初から無かったのかもしれない。何とも遣り切れない結末だった。
レンジャーの裁定を仰ぐことを強く進めたのはオレリーだったから、哀れなバッカルーを前にした彼女の胸中はいかばかりであったか。
――本当なら、すぐにでも二階の自分の部屋に駆け上がって鍵でも掛けてしまいたかったろうな、と、エミールから見て、そんな場面だった。
レンジャー法務官補のC.C.デル=ペッツォと同大隊付き法務官助手のバーナビー・デイヴィスが酒場を訪ねてきたのは、そんな折のことである。
ホールに集った面々を前に、C.C.は気圧されることなく正面から見据えた。
どの面にも、不信感と敵意が浮いている。
――これは相当に嫌われているわね……。
だがそれも仕方ない。エンシーナスは阿漕なことをし、レンジャーである自分も、その片棒を担いでいると思われているのだから。
それでも彼らの協力を得なければ、自分の中の正義を貫くことはできない。
C.C.は覚悟を決めて、彼らに語りかけた。
バーニーは、C.C.がレンジャーとして見聞きした〝この件について〟を語り、そのうえで、法曹隊員として〝この件〟におけるエンシーナスの対応に疑義を持っていると伝えるのを聞いた。
そして、彼女が改めてエンシーナスを告発するのに協力を求めるのを。
果たして、聞き終えたカウボーイと〝流れ〟たちの表情は、やはり硬いままだった。
――そりゃそうだろうさ……。
カウボーイたちは、町の奴らと巡回判事、それにレンジャーとに、寄ってたかって裏切られ、嵌められたばかりだ。
レンジャーの制服を着た俺たちを信用できるわけがない。
法務官殿から宜しく頼まれはしたが、どうにもこのお嬢さんは、〝何ごとも真正面から〟を外そうとしない。……やれやれ、だ。
だがバーニーは、そんな役職上位の小娘のことがどちらかと言えば嫌いじゃない。
少々あぶない橋を渡っても、彼女の正義とやらの手伝いをしてやりたくなった。……そもそもエンシーナスのような男は嫌いなのだ。




