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おんな拳銃無頼  作者: ガンアクションだいすき
25/41

「正式に抗議します」


「見ての通りだよ、嵌められたんだ……」

 バリーは、オレリーの手の内の水筒から二口三口を喉に流し込んで、ようやく声を出せるようになると、今度はペインの口許へと水筒を持っていってやっているオレリーの横顔に、視線を上げることなくそう耳打ちした。

 視線を上げなかったのは、〝こうなることはわかっていて(しか)るべきことだったのに、彼女の熱意に当てられてローイードへと向かった()()()後悔している自分の目〟を、彼女に見せたくなかったからだ。

 それでも状況は正しく伝えなければと、彼は言葉を続けた。


「…――営地に着く前に街道で小隊に行き合うとラーキンズの手下が()()そこにいて、俺とペインはその場でお縄さ」

 その言葉の響きの中にバリーの自嘲の想いを聴き取って、オレリーも視線を落とした。

 彼と彼の仲間と自分のために、言葉を探したが適当なものが出てこない……。それでも、ただ意気消沈しているわけにはいかなかった。

 オレリーは立ち上がって、自分を励ますように、周囲を見渡して声を上げた。

「法務官はいない? 誰か法曹隊員は来てないの?」


 C.(カルメーラ)C.(キアラ)の横でバーニー・デイヴィスが目だけを向けてきた。法務官()()の彼より、法務官()の彼女の方が役職の上位者である。

 一応、礼儀としてエンシーナスの方を向いてから、C.C.は一歩を踏み出して応じた。


「デル=ペッツォ法務官補よ。大隊付き法務官の助手と一緒に同道してきた」

 視界の中で、青紫色の旅行ドレスの少女の頭が、勢いよくこっちを向いた。

 次の瞬間、自分を〝見た〟勝気そうなすみれ色の瞳の目が、少しばかり失望したようだった。

 おそらく自分が〝それほど年齢(とし)のかわらない女性(おんな)〟だったことが()()させたのだろう。

 C.C.は〝ご期待に副えずごめんなさい〟というような表情は勿論せずに、レンジャー法務官()の威厳を繕って少女を真っ直ぐ向いた。

 少女は一つ頷いて背筋を伸ばすと、凛と威儀を正して口を開いた。


「わたしはオレリー・ラングラン。このふたりは町との係争についての調停を求めてレンジャー営地を訪ねたはずです。この仕打ちには、正式に抗議します」

「そういう話は聞いてないわ」

 法務官補は冷徹に事実を返したが、少女の話には興味を覚えたようだった。

「けれど、もしそれが本当なら…――」

 少女の真摯な目に、法務官補がそう応じかけたとき、

「――デル=ペッツォ法務官補……」 エンシーナス大尉がそれを遮った。「我々はその件でルズベリーに来たのではない」

 どうやら隊の責任者らしい上級士官の〝好意的な響き〟など欠片もないその言い様に、オレリーの表情が再び強張る。

 エンシーナス大尉は事務的な口調と表情とで、こう続けた。

「我々はルズベリーを不法に占拠した()()()()を排除すべく、独自の判断で動いている」

 オレリーはすぐさま反論した。

()()とは何を(もっ)てそう言うのですか。ルズベリーと彼らの間に、たしかに行き違いはありました――」

 それをエンシーナス大尉は、にべ無く封じた。

「細かなことは〝私〟が判断する。……すでに町と巡回判事から状況は得ている」

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