レンジャー法務官補
カウボーイのふたり――バリーとペイン――は、レンジャーに引っ立てられる形でルズベリーへと帰ってくることとなった。……捕縄を掛けられた姿で曳かれて。
エンシーナス大尉の率いる25駝のレンジャーの二列縦隊は、町の大路を常歩で進み、ロータリの在る酒場前の辻を素通りして、整然と保安官事務所のある辻に進入した。
レンジャー法務官補のカルメーラ・キアラ・デル=ペッツォと、同じく法務官助手のバーナビー・デイヴィスは、視界の先のエンシーナス大尉が、左手を上げて背中越しに小隊へ、停止の合図をするのを見た。
C.C.は上半身と肘を使って手綱を引きトリウマを停止させる。バーニーも他のレンジャーも同じくトリウマを停止させ、25駝の小隊は辻の中程で停止した。二人のカウボーイらは、ようやくその場にへたり込むことができた。
その様子をカウペルス巡回判事とともに戸口から見ていたラーキンズは、トリウマから降りたエンシーナスと目が合うと、上機嫌な表情となって肯き合った。
それが視界に入ってしまったC.C.とバーニーは、それぞれが内心でだけ舌打ちをしてトリウマを降りた。
ほどなくして町長が辻に姿を現わすと、保安官と巡回判事と一緒になってエンシーナスを出迎えた。
と、トリウマを降りたレンジャーの堵列の面前を横切って縄に繋がれたカウボーイに近付いた人影があった。
大隊付き法務官の指揮下にあるC.C.とバーニーは小隊に属する者ではないので、堵列ともエンシーナスと町の首脳らとも離れたところからそれを見ていた。
燕のような軽やかさで風を切って近付いてきた人影は、C.C.よりは幾らか(3~4歳程)年若い少女のもので、彼女は、些か流行遅れなデザインの青紫色の旅行ドレスを着ていた。
「バリー! ……ミスター・ペイン! これはいったいどういうことなの」
少女は捕縄を掛けられたカウボーイに取り付くや、よく通る声でそう質した。ふと、C.C.は思った…――ああ、〝生来の先導者〟の声だ、と。
少女にそう質されたふたりのカウボーイは、何かしら応えようとした。が、町に入る数マイルを、炎天下、常歩のトリウマに曳かれて歩かされ、声を出せる状態にない。
少女はレンジャーの堵列を振り見やった。
「もし……誰か水をっ」
その声に圧されて堵列の中の若い隊員が腰の水筒に手を掛けたが、エンシーナスの視線を確かめた少尉がそれを制止した。
絶句した少女の表情が、みるみる険しくなってゆく。
C.C.は自分の水筒に手を遣ったが、そのときにはもう、バーニーが水筒を手に一歩を踏み出していた。
差し出された水筒を受け取った少女は、それを二人のカウボーイの口許に持っていって飲ませてやりながら礼を言った。
そのバーニーは、エンシーナスから苦々しい表情を向けられることとなったが、少女には丁寧な笑みを、大尉には不敵な笑みを、それぞれ返し、C.C.の隣に戻って来た。
C.C.はバーニーに肯いて返すと、大尉の方をまっすぐに向いて、年長の法務官助手の取った行動を全面的に支持する旨の意志を表明したのだった。




