表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おんな拳銃無頼  作者: ガンアクションだいすき
22/41

不承不承


 翌朝――


 レンジャー(駝乗警邏隊)営地のあるローイードまでの4日の旅程に立ったのは、フレッドの兄のバリーと、もうひとり、神経質そうな顔をしたノッポのペインだった。

 バリーは早朝にロータリの在所でもある酒場(サルーン)を訪ねると、フレッドの介抱をくれぐれも頼むと、残ったバッカルー(カウボーイ)については〝あんた(オレリー)の指示に従わせることにした〟ので()()は宜しくとルズベリーを発っていった。


 勝手に後事を託されたオレリーは、さっそくバッカルーとスチームコーチ(蒸気四輪)の運行業者を呼びに行かせると、保安官事務所にラーキンズを共に訪ね、こういった。


スチームコーチ(蒸気四輪)の運行を再開させるわ」


 何も聞かされていなかったバッカルーたちが互いに横目を呉れ合うことになった。すかさずオレリーは、

「ただし――」 と、バッカルーたちの不満が顕わになる前に言継いだ。「コーチに乗れるのはこの町に関わりない旅人だけよ」

 これにはスチームコーチの業者が難色の声を上げかける。

「おい、なんだってそんな面倒くさ(いことを)…――」

 オレリーは再び遮った。

「町の人間も係争の当事者よ。バッカルーに牛を返さないで町の側だけが利益を得るのは信義にもとる。……でしょう? でも〝たまたま立ち寄った旅行者〟には関係のないことだから…――()()は妥協案」


 コーチ業者の中年男は、聞き終えると〝理屈は解ったが納得はし難い〟という表情を浮かべることになったわけだが、晴れやかな表情のオレリーに、表立っては何を言うこともなく不承不承に肯いて返したのだった。


 ラーキンズは、ときおり首を左右に振りはしたものの、彼女を遮るようなことはしなかった。そして話を聞き終えるや、手下の保安官助手に大声を張り上げたのだった。

「カウマンス! エンリケス! お前たち、ステーション()に出張っていって、町の人間がコーチに乗ろうとしたら〝丁重に〟ご遠慮いただけ」

「え?」「なんで俺たちが……」

 名指しされたカウマンスとエンリケスのみならず、オレリーも怪訝となってラーキンズを見る。〝保安官代理代行(ラーキンズ)〟は、やはり大きな( )(それが地声なんだろう)で応じた。

「そのお嬢さんじゃ、誰が町の人間かどうか判らんだろうが! レンジャーが営地からやってくるまでの間は、揉め事は起こさないようにする取り決めだ」

 ラーキンズは面倒くさそうに言って、手下ふたりを事務所から追い出すように急き立てた。

 言い方は〝アレ〟だが、しごく真っ当な判断をしてみせたラーキンズに、オレリーは少しばかり彼を見直したのだった。



 こうしてスチームコーチの運行も再開され、ローイードのレンジャーがルズベリーに姿を現わすまでの間、表面的には町に平穏が戻ったのだった。


 ……が、それが6日後には、〝最悪の形〟で裏切られて()()ことを、オレリーたちは知ることになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ