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おんな拳銃無頼  作者: ガンアクションだいすき
16/41

〝警告〟と〝見せしめ〟


「おい誰か医者を呼んでやれ…――」

 騒ぎの収まりつつある外の様子を窺うと、扉の向こうからそんな声が聞こえた。

 スイングドアを押して外に出たオレリーとエミールは、辻の真ん中に〝マチルダ(寝袋)〟のようなものが打ち捨てられているのを見た。

 オレリーは一目見てそれがマチルダではないことを見て取ると、傍らの〝相棒〟を向いた。

「――エミール、〝ドク〟を呼んできて……早く!」

 相棒は「わかった!」と、ドクとマルレーンが泊まる民宿の方へと駆け出した。

 辻に打ち捨てられたのは、カウボーイの、――あの〝伝道所への小路の入口に立っていた〟少年だった……。



 ドクがホールに下りてくると、オレリーたち〝渡り〟とロータリのコミッショナー・グレンの視線が集まった。

「どう? 具合は」

 座を代表してオレリーが問うと、ドクは卓の上のビスケットに手を伸ばしつつ説明した。

「それほど酷くはないよ……。裂傷と、あちこち打撲もしてるけど、内臓は無事だし骨折もしてない」

 辻に倒れていた少年――名前はフレッドといった――がまるで〝ぼろ雑巾〟のようだったこともあり、怪訝な目になったマルレーンがドクに問い質した。

「トリウマに()かれたんでしょ?」

 疾走するトリウマから落馬して引き摺られれば、たいていは大けがだ。

 ドクは、咀嚼したビスケットを飲み込んでから、のんびりとした口調で応じた。

「じっさいに引き摺られたのは10ヤード(9メートルくらい)ほどじゃないかな。〝警告〟と〝見せしめ〟が目的で……、加減はされてる」


「〝警告〟……〝見せしめ〟……」

 言葉を呑んだオレリーに、ドクは、一瞬、躊躇ったようだったが、肩を竦めて言継いだ。

「一応言っておく。ここフロンティアじゃ〝推定無罪〟は力で呑ませるものだからね」


 が、どうやらそれを彼女は聞いてはいないようだった。


 ――これは〝警告〟で〝見せしめ〟で、だから命は取らない

         少し痛い目に遭わせただけだぞ、というわけ……


 オレリーの口許が〝溜息〟と〝怒り〟とで歪んだ。右手が、左の腰――…クロスドロー(利き腕の反対側側面)の位置のホルスターに伸び、その留め金をそっと撫でる。

 傍でそれを見たマルレーンが、何とも言えない表情をドクへと投げ掛ける。


 オレリーは、ひとつ黙って頷くと、そんなドクの面前を横切って店の戸口の方へと歩き出した。

「エミール、バッカルー(カウボーイ)たちに伝えて――『動くな』と」


 ゆっくりと首を左右に振って肩を竦めていたエミールが「わかった」と返すよりも早く、オレリーはスイングドアを内側から押して外へと出ていった。


 ドクの顔から目線を外したマルレーンが、口許を引き締めてオレリーを追った。

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