「……ルズベリーと戦争を?」
「では、どうあってもスチームコーチは通さない、と」
カウボーイの主張を一通り聞き終えたオレリーが結論をもう一度確認すると、ガンスリンガーのリーダーははっきりと応えた。
「ああ」
オレリーは、リーダーの背後でそれを聞いた少年が、表情を曇らせて視線を落としたことに気付いた。
リーダーは肯いて返すと、それ以上は続けなかったが、代わってノッポで神経質そうな顔をした男が、横から(彼なりに)凄むようにまくし立てた。
「もともと酒と女を使って阿漕な真似をしてきたのは町の方だ。牛を返してもらうまでは無理を通させてもらう」
周囲の男たちが、同じく凄むような表情となる。
「ここにいる8人でルズベリーと戦争を?」
真面目な表情をしたオレリーが、ひとりひとりを見返して訊くと、彼らは黙って見返してきた。
オレリーが言葉を探しているうちに、再びリーダーが口を開いた。
「必要ならこの辺りのバッカルーに声をかける。仁義で繋がってるのは、あんたたち〝渡り〟だけじゃねえんだぜ」
「そこまでしなくても、巡回判事にいまの話をして裁定を仰げば――」
予想外に意固地な男の言にオレリーは食い下がったが、道理を語るよりも前に、男の口の端がフッと歪むのを見て、けっきょく言葉を切った。
「あんたらはしょせん余所者だ、何もわかっちゃいねぇ。だからそんな頓珍漢なことを言うのさ」
頭ごなしに頓珍漢と決めつけられ表情の強張ったオレリーだったが、ここはぐっと堪え、男に話の先を促した。男は腰のSASSを――ふたりの〝女流れ〟を刺激せぬよう配慮しつつ――抜くと、面白くもなさそうに手の中で玩びながら、逆に訊いてきた。
「町長の奴は、俺たちと話すより先に〝判事に話を持っていく〟と決めてたろう?」
オレリーとマルレーンがそれぞれ肯いて返す。男は銃を一回しさせながらホルスターに戻しながら断言した。
「結末は最初から決まってんだよ。判事は町の奴ら……町長や保安官とつるんでるのさ」
そんな言葉に、一気に表情の曇った〝女渡り〟ふたりは、カウボーイらの口から、さらなる判事と町の有力者らとの繋がりを聞かされることとなった。
この周辺のカウボーイは、ルズベリーに歓楽を求めれば必ず足元を見られるのだという。
とくに賭博に関しては度を越しており、勝てば酒と女がつきまとい、必ず負けるまで賭け続けさせられ、途中で止めたくとも、賭場の奥から現れる〝ならず者〟どもがそれを許してはくれない。
町の賭博場に足を向けたが最後、そいつの牛は賭博場の抵当となって、最終的には町の有力者の懐に流れる、という図式がここにはあるのだという。
そういう横暴を訴えても保安官が取り合わないのは、保安官もまた町の有力者だからだ。
さらにもう一つ――。
保安官バッヂを付けているラーキンズだが、じつは任期切れで保安官資格を喪失しているのだという。
後任の選出については、候補者が立つそばから不慮の事故に見舞われ――それさえも前保安官一味の仕業だろうことは明白だったが…――町長によって無期限に延期されていた。




