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6. 閑話

「お、きたきた」


ほんのりと夕焼けが残る空の下、正門前で数人の男たちがこちらを向いて言った。一人は大泉だ。でかいからすぐに分かる。あとの3人は、、、、?


「おつかれー」


あぁ、吹部男子の先輩か。薄暗くてよく見えなかったが、合奏の時に見た顔だ。確か楽器はチューバ、フルート、打楽器だったっけか。そう考えながら少し気の抜けた返事をする。


「山口くんやんな?これからよろしくな〜」

「あ、こちらこそよろしくお願いしますー。もう一人の一年はまだなんですか?まだ話せてないんですけど...」

「あーあの子やんな、アルトの。ミーティング終わってすぐダッシュで帰ってたけど、二人もまだ彼と面識ないんや?」


何か特別な話をするわけでもなく、今日の合奏のことから部活のことや高校のこと等、他愛も無い会話を重ねた。トランペットパートで集まっていた時もそうだったが、部内でピリピリしてる雰囲気が漂っているせいか、ここでもコンクールに関する話題は出なかった。

そうこう話しているうちに正門に溜まっていた生徒たちもそれぞれの帰路につき、我々吹部男子たちも阪急組とJR組に別れて帰路についた。



阪急組は俺とさっき声をかけてくれたチューバの西村先輩だ。


「コンクールの話って上級生の間でどうなってるんですか?」

思い切って聞いてみた。


「あーあれな〜。最近幹部が相談してるらしいけど、全然進んでへんらしいわ。これあんま他の人には言わんといて欲しいんやけど、しょーじき俺はコンクールにこだわってるわけでは無いから、どうでもいいっちゃどうでもいいんやけどね。他の三年二人もそんな感じやわ。山口くんはどうなん?」

「俺はコンクール目当てで入部したんで、正直混乱はしてますかね...まあ決まったことはそうそう覆らないとは思うんで、楽器吹く場所さえあればいいかーくらいのマインドで行こうと思ってます!」

「うんうん。そんな感じの方が気ぃ楽でいいと思うわ」


「じゃあ俺ここで乗り換えなんで。また明日よろしくっす」

「ん。せっかくの吹部男子同士やし仲良くしようや〜」


そう会話を交わし、和也は電車を降りた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ただまー」

「おかりー!」


家で出迎えてくれたのは3歳年上の姉・藤井愛である。

何か焦ってるらしい。


「漏れる漏れるマジ漏れるやべえ!!!!」


本当にやめてほしい。毎日このテンションだし、だから彼氏できないんだよ。


いつも通り手を洗い、テーブル上にある作り置きのおかずを電子レンジで温める。


「っかあ〜〜〜〜!ブリこいたブリこいた!!まじうんこちょっと頭出てたわあっぶねえw てか聞いてや今のうんこクリーンうんこやったわ!ケツ拭いてもトイレットペーパー汚れへんやつ!!!!」

「マジでやめてくれ....自分が彼氏できひん理由わからへんの??」

「弟よ。言っておくがお前のお姉ちゃんは結構美人な方だ。スタイルもめちゃくちゃ良い。その気になれば彼氏の3人や4人、すぐにできる。」

「できてたまるかよ」

「ただちょお〜〜〜〜っとBL好きで言葉が汚くて下ネタが好きで声優との結婚を夢見てるだけなのだよ。分かるか?できないんじゃない。作らないだけなのだよ。」

「今の自分で言ってて悲しくならねーのか!?めちゃくちゃ自分のこと的確に分析できてるぞ!?男が寄ってくる要素一つもねーぞ!!!!!もっと女らしさを磨けよそのご自慢の顔面とスタイルがあるなら!!!!」

「弟よ。今は男女平等・多様性の時代ぞ?男らしさ、女らしさってのは今の時代にそぐわないんじゃないのかい?」

「あーもーそのジェンダー平等とかいう反論しづらい無敵の武器持ち込むなよ!!それ言ってるやつだいたい現実逃避のための言い訳として使ってるだけだろ!お前いっつも大学サボって家で食っちゃ寝してるだけのただのうんこ製造機やんけ!誰がそんな奴の彼氏になりたいと思うかよ!!!!!!」


「弟よ、、、。お前、、、強くなったな、、、。ただ君にも彼女がいないのはその女心を理解できずに正論で殴るだけのDV男気質からではないのかね??うん??」

「ウッ.......」

「ほ〜れほ〜れさっきまでの勢いはどうしたのかね??図星だったのかね??ねえねえ。あの言葉のナイフはもう鞘に仕舞ってしまったのかね?え?」


「あららあ〜お姉ちゃんの方が一枚上手だったか〜。ほれほれ、さっさと飯食って風呂入ってブリこいて寝るんだな。」


、、、、和也の完敗であった。

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