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緑のジャージと俺と俺。

作者: 爛伽

午後4時頃、俺の家の呼鐘が俺を起こした。荷物を受け取ったが心当たりがなく、恐怖とも興奮ともとれるような感情が俺の中でせめぎ合っている。荷物の入った箱を開けると1番上に手紙がある。その下には服が入ってあった。

「5年後の自分へ。

高校を卒業した俺から服を送ります。

きっと一人暮らしで寂しいでしょうが楽しくやれていると願っています。

服は、こういうのが似合う大人になりたい。がコンセプトです。

きっとこれを書いたことも覚えてないだろうけど、

気に入ってくれると嬉しいです。

5年前の貴方より。」

そんなことがあったような、なかったような。ただ言えることは恐怖は消え、好奇心となった。

その服の内容は上は黒いシャツと薄い肌色のボーダーラインがはいった緑のジャージ、下は淡い青のジーパンだった。

そこで俺は当時のことを鮮明に思い出した。

元々太っていて、大した身長もなかった俺はたった一つの写真集の男に憧れていた。

何を着ても、何をしてもかっこいい。そんな彼に憧れた。

その中で一際俺を魅了した服装だった。

背景のセットまで覚えている。薄暗い街中で撮ったような写真だった。

そこで服を投げ上げるような躍動感に溢れると同時に解放感を感じる写真となっていた。

もちろん高かったからこいつは安い代替品だろうが。

着てみて鏡を見ると目を見張るものがある。

あの時とは背丈も、幅も、髪色や顔つきだって違う。

当時の俺とは似ても似つかないような雰囲気だ。

俺は過去の俺に謝りたくなった。


そんなことをしているうちに出勤の準備をする時間になった。店入りは6時、業界では少し早いというくらいだ。


5年前、醜かった男は華とも言えるホストになった。


俺はモデルだった。いや、モデルになりたかった俺には稼ぎが必要だった。

無知だった俺には楽に稼ぐ方法はそれしか知らなかった。

そのために自己の見た目を磨く努力をやめ、施術を施した。

その結果最終的には廃業となるはずだったホストで成り上がってしまった。

その日の俺にはえもいえぬ哀愁が漂っていたらしく、それを好感的に受け入れた。曰く、エモい。らしい。

深夜2時、仕事を終えた俺はプレゼントを着て店を後にし、散歩に出かけた。体がこの上なく軽かったのだ。仕事終わりはいつも地に伏すようにして帰る俺がこの様子なものだから同僚は若干引き気味だった。

暁闇を往く俺はまるで知らない街を歩いているような錯覚に陥った。私にとっての檸檬は俺にとってのこいつらだ。そう考えた俺はこいつでいいことを思いついた。かつて好きだった写真の背景と瓜二つの景色の場所へと行った。

ジャージを脱ぎシャツ1枚になった。そうして服を放り投げる。

その瞬間フラッシュの光が自分にあてられたような気がしたのだ。

その一瞬だけ、俺たちは夢に生きることが出来た。

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