創世神話
かつて、神はそこに理想郷を作ろうと思った。最初に産んだのは光だった。その後に土を産んだ。そして風を産み、水を産み、炎を産み、植物を産んだ。神は、それをまとめて「育む者」と呼んだ。
そこから、神は他の世界にならい、「動く者」を生み出した。神の作った「動く者」たちは大きく、恐ろしい姿をしていた。彼らは、天海の水を飲み生きていた。
しばらくして、神は退屈になった。少し興味を持って、神は他の世界を見に行ってみた。その世界には、神の知らない生き物がいた。神はその生き物たちの赤ん坊をいくつか自分の世界に連れ帰った。神はその赤ん坊たちを育て、理想郷に放り込んだ。
まず、草を喰う者を放り込んだ。すると、草を喰う者が理想郷に溢れた。困ってしまった神は 、肉を喰う者を放り込んだ。ついでに、肉と草を喰う者も放り込んだ。神は彼らを「狩る者」と呼んだ。そこでやっと、神は満足した。
その中に、「賢い者」たちがいた。賢い者たちはそこに家を建て、集まりを作った。やがて、そこに文化ができた。神は面白いと思った。神は、その賢い者たちを俄然気に入り、他の者も賢い者になればもっと面白くなると思った。神は狩る者の中で肉を喰う者をいく匹か拾い上げ、賢い者の姿と賢さを与えた。次に育む者をいくつか拾い上げ、同じ様に賢い者の姿と賢さを与えた。けれど、神はそうやってできた賢い者が元の賢い者と同じなのが面白くなかった。なので、育む者だった賢い者には育む力を持った目を、狩る者だった賢い者には狩る者になるための毛皮を与えた。
そして、元の賢い者を彼らを連れてきた世界での呼び方にもとづき人間と呼んだ。それをもじり、狩る者だった賢い者を人獣、育む者だった賢い者を人妖と名付けた。
やがて神は天海に沈み、そこからぼんやりと理想郷を眺めた。
そして、
『創世伝』初章