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千夜一夜物語  作者: 冷やし中華はじめました


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思い出の買取所

 街の片隅に「思い出買取所」という奇妙な店ができた。

 つらい記憶や、忘れたい過去を、記憶データとして抽出し、現金で買い取ってくれるのだ。

 男は借金返済のため、昔の恋人にこっぴどく振られた記憶を売った。見事に心は軽くなり、おまけに金も手に入った。味をしめた男は、上司に怒られた記憶、友人と喧嘩した記憶など、少しでも不快な思い出を次々と売っていった。

 数年後、男は莫大な資産を築いていたが、彼の頭の中には「自分にとって都合の良い、楽しい記憶」しか残っていなかった。

 ある日、彼のもとに見知らぬ老人がやってきた。

「あなたは誰だ?」と男が尋ねると、老人は深々と頭を下げた。

「私ですよ。あなたがかつて全財産を騙し取られ、地獄の苦しみを味わわされた詐欺師です。あれから改心しましてね。謝罪に来たのです」

 しかし、男はきょとんとしていた。彼は、騙されたという「つらく悲惨な教訓の記憶」をとっくに店に売ってしまっていたのだ。

「はて? そんなことありましたかな。私は今まで、誰にも騙されず、順風満帆な人生を送ってきましたよ」

「ほう、それは素晴らしい」

 老人はニヤリと笑うと、鞄から新しい投資の契約書を取り出した。

「実は今日、絶対に儲かる素晴らしいお話を持ってきましてね……」

 男は一切の疑いを持たず、満面の笑みで契約書にサインをしたのだった。

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