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究極のシェルター
核戦争の足音が近づく中、富豪のアール氏は、地下深くへ続く完璧なシェルターを建設した。百年分の食料、空気清浄機、そして厳重な鉛の扉。彼は家族と共に中へ入り、内側からボルトを締めた。
「これで何が起きても安全だ。外は地獄だろうがね」アール氏はモニターを眺めたが、爆発の衝撃でカメラはすぐに壊れてしまった。彼は地下での贅沢な暮らしに没頭し、外の世界を忘れることにした。
長い年月が経ち、ついに備蓄が尽きた。彼は恐る恐る、防護服に身を包んで地上への扉を開けた。しかし、そこにあったのは荒野ではなく、花の咲き乱れる庭園と、笑顔の住人たちだった。あの日、戦争は回避され、人類は永遠の命を得て、核を捨てて理想郷を築いていたのだ。彼だけが、人生の全てを無意味な箱の中で過ごしたのだった。




