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平和の特効薬
科学者のピー氏は、攻撃性を消し去るガスを開発した。これを地球全土に散布すれば、戦争も犯罪も消えるはずだ。彼は正義感に燃え、気球を使ってガスを世界中にばら撒いた。
翌日、効果はてきめんだった。兵士は銃を捨て、強盗は獲物を逃がした。ピー氏はテレビの前で歓喜に震えた。「ついに楽園が訪れたのだ!」
しかし、数日後。街には静寂が漂っていた。人々は「食事のために家畜を殺す」ことさえ残酷だと感じ、空腹に耐えながら座り込んでいたのだ。ピー氏もまた、胃袋の叫びを聞きながら、台所のゴキブリを殺せずにいた。人類は平和のうちに、揃って餓死するのを待つばかりとなった。




