609/617
正直すぎる鏡
画商のエス氏は、映る者の「醜悪な本性」を暴くという不思議な鏡を手に入れた。自分自身を映してみたが、そこにいたのは小奇麗な紳士だけだ。「私は善人なのだな」と彼は悦に浸り、その鏡を高く売ることにした。
やがて一人の成金が、自慢の美貌を確認しようと鏡の前に立った。しかし、鏡に映ったのは、腐った肉を抱えた飢えたハイエナの姿だった。客は絶叫し、エス氏を詐欺師だと罵って去った。
憤慨したエス氏が、再び鏡の前に立った。鏡にはやはり、清潔で善良そうな紳士が映っている。彼は満足して鏡を撫でたが、ふと気づいた。鏡の隅に小さな文字で注意書きがある。「※この鏡は、持ち主の傲慢な自己愛をそのまま投影します」




