表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百物語  作者: 冷やし中華はじめました


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/163

虚空の果実

A氏は、宇宙開発局の一等研究員だった。彼の仕事は、新たに発見された惑星X9の大気組成を分析することだった。


ある日、A氏は驚くべき発見をした。X9の大気には、地球上のどの物質とも似ていない未知の元素が含まれていたのだ。この元素は、光を吸収し、エネルギーに変換する特殊な性質を持っていた。


A氏はこの発見に興奮し、すぐに上司のB博士に報告した。B博士も目を輝かせ、「これは人類の歴史を変える大発見だ!」と叫んだ。


しかし、喜びもつかの間。翌日、A氏の研究室に謎の男C氏が現れた。


「君の発見は素晴らしい。だが、この情報を公開してはならない」


C氏は、政府の極秘機関の代表だと名乗った。彼らは、この新元素を兵器に利用しようとしていたのだ。


A氏は苦悩した。科学者としての良心と、国家への忠誠の間で引き裂かれた。


悩んだ末、A氏は真実を公表することを決意。しかし、その直後、彼の研究データは何者かによって消去されてしまった。


絶望的な状況の中、A氏は密かにX9への探査機打ち上げを計画。D子という若い技術者の協力を得て、極秘裏に準備を進めた。


打ち上げ当日、彼らは政府の監視の目をくぐり抜け、探査機を発射することに成功。しかし、軌道に乗った直後、探査機との通信が途絶えてしまった。


A氏とD子は落胆したが、諦めなかった。彼らは通信回復のため、不眠不休で作業を続けた。


そして、打ち上げから7日後、奇跡が起こった。探査機からの信号が届いたのだ。


しかし、その内容は彼らの想像を遥かに超えていた。


探査機が送ってきたデータによると、X9の大気中の未知の元素は、実は微小な知的生命体だったのだ。彼らは光を吸収し、思考エネルギーに変換する能力を持っていた。


更に驚くべきことに、この生命体たちは、地球の科学者たちとコンタクトを取ろうとしていたのだ。


A氏とD子は、この情報をどうすべきか悩んだ。公表すれば、彼らは危険な立場に置かれる。かといって、隠蔽すれば、人類は素晴らしい出会いの機会を失ってしまう。


二人が決断に迷っていたその時、突然、研究所全体が強烈な光に包まれた。


気がつくと、A氏とD子の前には、光で形作られた人型の生命体E氏が立っていた。


「我々は、あなた方の決断を見守っていました」


E氏は語った。彼らは、知的生命体がどのような選択をするのか、実験していたのだという。


「あなた方は、真実と平和を選びました。我々は、あなた方と交流する準備ができています」


A氏とD子は、喜びと驚きで言葉を失った。


その瞬間、研究所のドアが開き、B博士とC氏が慌てて飛び込んできた。彼らの表情には、恐怖と後悔の色が浮かんでいた。


「我々は間違っていた」とC氏は呟いた。「真実を隠蔽しようとして、人類の未来を危うくするところだった」


B博士も深く頭を下げた。「A君、君の勇気が我々を救ったんだ」


E氏は、静かに微笑んだ。


「あなた方の種族には、まだまだ成長の余地がある。我々は、その過程をサポートしたい」


そして、E氏は光の粒子となって消えていった。研究所の中は、再び静寂に包まれた。


A氏、B博士、C氏、D子の4人は、互いの顔を見合わせた。彼らの表情には、恐れと興奮、そして希望が入り混じっていた。


人類の新たな章が、今まさに幕を開けようとしていた。


しかし、誰も気づいていなかった。研究所の片隅で、一つの植物が静かに芽吹いていたことを。


それは、X9の大気から生まれた新しい生命体だった。光を吸収し、驚異的なスピードで成長していく。


人類と宇宙生命体の交流が始まろうとする中、地球上で静かに、しかし確実に、未知の進化が始まっていたのだ。


その植物は、やがて人類の運命を大きく変えることになる。


だが、それはまた別の物語。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ