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千夜一夜物語  作者: 冷やし中華はじめました


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星からの贈り物

 その日、地球は静かな興奮に包まれていた。  突如として飛来した銀色の円盤が、大気圏外で静止し、一つのカプセルを投下していったからだ。円盤は攻撃することもなく、また通信に応じることもなく、用が済んだとばかりに光の彼方へ飛び去っていった。


 カプセルは、国連本部の前庭に、吸い込まれるように軟着陸した。  それは見たこともない金属でできており、表面には複雑怪奇な幾何学模様が刻まれていた。太陽の光を浴びて、神々しいまでに輝いている。


 世界中の科学者が招集され、厳重な調査が始まった。 「これは、間違いなく彼らからのメッセージだ」  著名な天文学者が、震える声で言った。 「あるいは、友好の証としてのプレゼントかもしれません」  物理学者も目を輝かせた。


 まず、カプセルの素材が分析された。それは地球上のどの合金よりも硬く、軽く、耐熱性に優れていた。 「素晴らしい。この金属の組成を解明するだけで、我々の科学は数百年分も進歩するだろう」


 次に、表面の模様の解析が行われた。言語学者や数学者たちが、スーパーコンピューターを駆使して挑んだ。 「これは……単なる模様ではない。高度な数式、あるいは宇宙の真理を表す哲学的な詩のようにも見える」  人々は、その模様をTシャツにプリントし、「宇宙の叡智」として流行させた。


 そしてついに、カプセルを開封する日が来た。  世界中が固唾を呑んで見守る中、慎重に蓋が開けられた。  中には、得体の知れないドロドロとしたゲル状の物質と、いくつかの固形物が詰まっていた。強烈な、しかし嗅いだことのない独特の臭気が漂った。


 生物学者たちは歓喜した。 「これこそ、未知のエネルギー源、あるいは万能薬の原料に違いない!」  彼らはそのゲル状物質を微量ずつ採取し、あらゆる実験を行った。結果、その物質には極めて豊富な有機物が含まれており、微生物の活動が活発であることが判明した。 「これは『生命のスープ』だ。彼らは我々に、生命の起源と進化の秘密を教えようとしているのだ」


 人類は、この「星からの贈り物」に感謝した。  カプセルの解析プロジェクトを通じて、敵対していた国々も手を取り合った。宇宙の叡智を前には、地球上の争いなど些細なことに思えたからだ。地球には、かつてない平和と連帯が訪れた。


 その頃、数千光年離れた宇宙船の中では、二人の宇宙人が会話を交わしていた。


「おい、さっきの惑星で何を落としたんだ?」  船長が尋ねると、部下が気まずそうに頭(のような部位)をかいた。


「すみません。生ゴミ処理機が故障してしまいまして」 「またか。あれほどメンテナンスをしておけと言っただろう」 「はい。中身が発酵して酷い臭いになっていたので、船内に置いておくわけにもいかず……手近な惑星に不法投棄してしまいました」


 船長は呆れてため息をついた。 「まあいい。どうせあんな辺境の未開惑星だ。誰も気づきはしないだろう。容器も使い捨ての安物だしな」


「そうですね。中の腐った残飯と、壊れた部品ごときで大騒ぎするような知能レベルの生物は、あそこにはいないでしょうから」


 宇宙船はワープに入り、遠くへ消え去った。  地球では今日も、彼らの「生ゴミ」が、神聖な至宝として崇め奉られている。

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