王様の天気予報
その国の王様は、天気予報が嫌いだった。
外れるからだ。
「明日の天気を、百パーセント当てよ。
外れた者は処刑する」
命令は簡潔で、理不尽だった。
予報士たちは次々と首を落とされた。
雲は言うことを聞かないし、風も命令では動かない。
最後に残ったのは、一人の賢い予報士だった。
彼は静かに言った。
「明日の天気は、晴れでございます」
その夜、彼は密かに布告を出した。
《明日、天気がどうであれ、
国民は皆、笑顔で過ごすこと》
理由は書かれていなかった。
翌日、空は裏切った。
黒雲が垂れ込み、土砂降りの雨が国を覆った。
王様は激怒した。
「また外れたではないか!」
だが、窓の外を見て、言葉を失った。
人々はずぶ濡れになりながら、笑っていた。
踊り、歌い、手を取り合っている。
予報士は静かに言った。
「王様、空は泣いております。
しかし、国は晴れやかでございます」
王様は首をかしげた。
しばらく考え、やがて言った。
「……まあよい。
予報は当たりということにしよう」
それ以来、その国では、
雨の日ほど人々がよく笑うようになった。
空模様だけは、
最後まで王様の言うことを聞かなかったが、
誰もそれを気にしなかった。




