最後の仕事
この世界の終わり。
不老不死が実現した時、人はどういった行動を取るのか。ちょっと現代の医療問題にも関わる内容です。
が。
これまたさらっと読めます(笑)
プランターに咲く白い花に止まっていた蝶が飛んでいった。
「もうそろそろお仕事の時間でしょ、ゆっくりしすぎだよ」
「分かってるよ、心の準備」
屋上から病室に戻ると、同室の皆はカーテンを閉めていた。青野君、徹さん、茶野ちゃん、私は心の中で名前を呼んで、自分のベッドを取り囲むカーテンを開けた。
「よろしいですか、森木さん」
「はい」
真っ白なシーツが敷かれたベッドに横になった。あの植物状態の間、瞼の向こうにはこんな景色が広がっていたのか。――もっと美しい景色に、家族の顔が見えた気がするが。
「言い残すことは」
私を囲む皆の顔に笑顔が浮かんでいる。
「そうだね、私は今日で煙草を止めるよ、お前達が大きくなるまで長生きしなければいけない」
一斉に笑いがこぼれた。
「いい、昨日のことのように思い出すより、明日のことのように想像しなさい。別れとは敵わぬ幻ではないんだよ」
この日のために生きてきたのだ。私の体に繋がった医療機器を切るスイッチのボタンを私は押した。
――会えるだろうか。青春を共にした、あいつにも。
愛は、いつまでも、この胸に。
これでおしまいです。
初めて掌編を書いたのですが、いかがだったでしょうか。暇つぶしにでもなってくれれば幸いです。
お付き合いくださってありがとうございました。
また、いつの日か、、、