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最後の一冊
吉田と玲は、ひょんなことから一冊の本に目を通す。
「紙が世界から無くなった&前話から続く世界」がどうなっているのか。
さらっと読めます。
退屈を持て余した先達は、余りに多くの書物を残した。
「まさかな、文明がこんなに脆いものとは」
「必要なくなったから失ったまでさ、美しいものは全て過去形だ」
記録媒体としての紙が無くなって久しい。
「噂だが、先の紛失騒ぎには、犯人がいるって話だ」
「事故ではなく事件だと? そんな馬鹿な、意味がない」
「それがだ、玲、世の中には物好きがいてよ」
二人は椅子に座り、声を潜めた。
「まあ、犯人ってのは俺の友なんだが」
「本当か、まさか反乱分子の連中」
「そうだ、写真集が欲しかったそうでな」
「写真集? 美人の? いくらでもデータが転がっているだろう」
男は立ち上がり、やおらバッグから革の表紙の冊子を出した。
「ほら、すげえぜ」
ページを開くたびに現れる表情に、思わず二人は見とれた。
その本に収められた写真を遺影、と呼ぶことを二人は知らない。