陰と陽
「二人とも!おはよー」
李周と朱孔はその声がする方へと足取りを止め、振り返る。
彼女の名は桃花。
同じクラス、といっても人口が少ないここらでは一学年一クラスしかないのだが、要するに同級生といったところ。
とりあえず挨拶を返す二人ではあるが話好きの桃花はまだ一人で話しを続けている。
「今日って隣町から特別講師が来て授業してくれるんでしょ?どんな授業なんだろうね。たのしみだなー」
そういえばそうだったなと李周は自分が苦手な分野の授業では無い事を静かに祈る。
一方、朱孔は座学に関してはまるきり話にならないレベル。
二人して不安な表情を浮かべている。
「・・・・・・っぷ。あははははは」
そんな二人を見て、桃花は笑わずにはいられなかった。
「何がそんなに面白いのさー!」
朱孔が口をへの字にしながら桃花に訊ねる。
が、桃花は笑いが止まらずその問いに答えることができない。
ようやく笑いが治った桃花が目に涙に浮かべた涙を指で拭いながら朱孔の問いへの答えをだした。
「だって・・・・・・。二人して不安そうな顔してるんだもん。それがもうそっくりでさ!さすが双子だなって思ったらおかしくなっちゃって」
それを聞いて李周と朱孔はお互いにお互いの顔を覗き合う。
そんな姿を見ていた桃花はまた耐えきれず笑い転げ、つられるように二人も笑いだした。
その二人の顔にはもう先ほどの不安など毛ほども感じられない。
そんな青春を謳歌しながら三人は学校への足取りを進めていく。
桃花のおかげで吹き飛んだ不安だが、さて特別教師の授業が始まってしまえば話は別だ。
授業は座学。
そして特別講師は三十代半ばくらいの女性で、性格の悪そうな顔をしている。
この状況下で李周は焦っていた。
「みなさま、こんにちは。特別講師の胡劉と申します。本日は我が国、陽と敵対国である陰についての授業をしたいと思いますが、みなさんはもう六年生ですからね。座学については復習のつもりで手短に進行したいと思います」
それを聞いて、朱孔は胸を撫で下ろした。
復習であるなら恐らく指名等はしてこないはずだと、そう思い込んでしまった。
だが、そんな一瞬の隙も特別講師、胡劉は見逃さない。
「そこの君!名前は・・・・・・朱孔君?かな」
不意に呼ばれた自分の名前に、朱孔は肩をビクリと震わせる。
「なんで僕の名前・・・・・・」
「気を感じとればわかる事です。なにを考えているかもね。朱孔君が考えている通り指名はしませんが、もし私の質問に誰も答えられなかった時はみなさん、今日は居残ってもらいますからね」
その言葉に教室は急に静まり返る。
「では、この中で陽の国と陰の国について説明できる人はいますか?できる人は手を挙げてください」
だが誰もすぐには手を挙げられない。
もし間違えた答えをしてしまえば、みんな仲良く居残りだ。
そんなプレッシャーに耐えれる者などいないだろう。
もう講師に謝るしかない、そう考えた朱孔が発言の為、手をあげようとするがそれよりも早く手を挙げた者がいた。
ーー李周だ。
「この世界は丸い円の形をしており、領地は陰陽太極図と同じ様に白い箇所が陽、黒い箇所が陰となっています。また、陽は常に日が差し込んでおり暖かい気候になっています。それに比べて、陰は月明かりしかなく涼しい気候になっています」
兄ちゃんありがとう!と心の中でガッツポーズを決める朱孔。
一方、胡劉はバツの悪そうな顔をしている。
まさかこんなに完璧な回答が出てくるとは思っていなかったのだろう。
「李周君?かな。正解です。ですがあくまでこれは復習、一般常識だと言う事を忘れない様に」
そんなの強がりだ。
そう思いはしつつも口には出さない李周だが、胡劉はそんな李周の心もしっかりと読んでいた。
「それではみなさん、座学は大丈夫な様なので早いですがこれで終わりにします。次は陰陽五行の特別授業といきましょう!」
ーー陰陽五行・・・・・・。
こんにちは、まいちかです。
三話の閲覧ありがとうございます。
分かりづらかったかもしれないですけどこの世界は丸い大陸で孤島です。
陰陽太極図はよくお土産コーナーに売ってる男子小学生が好きそうな黒い勾玉と白い勾玉が組み合わさってる様な奴の事です。
説明がしづらいのでわからなかったら調べてみてください。
あー、これかってなると思います。




