双子
「コケコッコー!」
静かな村に鶏の鳴き声が響き渡ると、それは少年達の目覚めの合図でもある。
十二歳の少年、李周は弟、朱孔がまだ寝ぼけ眼でいる事を確認すると、朱孔を置き外へ出る為立ち上がる。
「兄ちゃん、早いよぉー」
目を擦りながら朱孔も立ちあがろうとするが寝起き故に力が入らず立ち上がれない。
そんな朱孔の元に李周は赴き、朱孔の頭を優しく撫でる。
「大丈夫だよ、朱孔。今日は兄ちゃんが行ってくるから・・・・・・。婆ちゃんに怒られない様に着替えだけ先に済ませとくんだぞ?」
朱孔が頷き、李周はそれを見届ける。
これから李周の身に何が待ち受けているのかと言うと実は大したことはない。
「今日は三つか・・・・・・。まぁまぁだな」
獣臭い藁をかき分け彼が手にしたものは、鶏の卵。
居間と子供部屋しかない小さい家で老婆と双子の三人で住んでいる彼らにとって、卵が三つもあればとりあえずの食事はする事が出来る。
卵を軽く水で洗い、鶏小屋の掃除を済ませた彼は居間で食事の支度をしている老婆の元に向かう。
「李周、卵は取れたかい?」
「あぁ。とりあえず三つは産んでたよ」
李周から卵を受け取った老婆は周囲を確認する。
恐らく、朱孔の姿を探しているのだろう。
その行為の意図に気付いた李周は起点を効かし口を開く。
「朱孔なら鶏小屋の掃除をしてくれているよ」
その言葉を聞き、老婆の顔には笑みが溢れる。
「そうかい、そうかい。朱孔は偉いねぇ」
そんなたわいもない会話をしていると着替えを済ませた朱孔が二人の元へと現れた。
「あら、朱孔おはよう。もう着替えも済ませてるのね。これから卵を焼くからね、李周も先に着替えて来なさいな」
李周は頷き自室へと戻り着替えを始める。
その間、居間からは老婆と弟の談笑している声が聞こえ自室で響き渡る。
李周が着替えを終え居間へと戻れば、もう食事の準備は済んでおり李周は先に箸を進めていた。
「・・・・・・いただきます」
李周が箸を進め一分と掛からぬ内に朱孔は食事を終えていた。
あまりの早食いに驚きを隠せない李周と老婆。
しばらく沈黙の時が流れるがその静寂を破ったのは老婆だった。
「李周ちゃん、食事はゆっくり食べなきゃダメよ。そんなに早く食べちゃったらお腹も膨れないでしょう?」
確かに朱孔は少し物足りなさそうな顔をしている。
まったくつくづく計画性のない弟だな、と李周は呆れるが朱孔がお腹をよく空かすのには実は訳がある。
それを理解している彼は、朱孔にまだ箸を付けてない目玉焼きを渡す。
「朱孔、食べていいぞ。これから学校に行くんだ。腹空かせてたら一日持たないぜ?」
「え・・・・・・。でもこれ食べちゃったら兄ちゃんのオカズなくなっちゃうよ?」
「大丈夫!兄ちゃんお米好きだから、オカズなんていらないよ!」
朱孔は躊躇いながらも目玉焼きを譲り受け、口いっぱいに頬張る。
その姿に李周と老婆は笑みを浮かべた。
だが、朱孔は気づいてないが彼の笑顔は少し寂しそうな哀愁を漂わせている。
それに気付いた老婆は、朱孔に悟られない様に二人に食事を急かす。
「さぁ!早くご飯食べないとね!学校に遅刻するよ」
朱孔は焦って目玉焼きを丸呑みし、李周もご飯を素早く口にかき集め呑み込む。
そして、二人同時に立ち上がり老婆への感謝と別れを述べる。
『ごちそうさま!行って来ます!』
言うや否や、二人は駆け足で走り出す。
その後ろ姿を見つめる老婆の顔に先ほどまでの笑顔はなかった。
第二話の閲覧ありがとうございます。
中国の建物とか衣服とかそう言うのが好き(あまり詳しくも無いし中国に行ったこともない)で中国っぽい感じの世界観で行きたいなと思ったが故に名前が少し分かりづらくなってしまいました、ごめんなさい。
自分でも打ってて「どっちが弟の名前だっけ?」ってなる時あるんで、間違えない様に気をつけます。
今回も追伸
プレビューで確認したら()付けたところルビになってて感動しました。




