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休日〜レオンハルトside

今日は王都の巡回だ。


巡回と言うより、お忍びの視察といったところか。


普段着よりも幾分か質素な服を着て、貴族街や平民街、市場などを回る。


幸い現国王になってから他国との諍いもなく、王都は比較的治安も良いので、まだまだ年若い私達は新しくできた店や流行りのファッションなどに目を向けながら歩く。


今日はアルフォンソもサミュエルもお忍び用のシンプルな服だ。


そして案内役はもちろんテオで、商家の跡取りらしい小話や裏話を聞けて面白いし、勉強になる。


マシューも来れば良かったのに。


いや、彼は休日でも忙しいかもしれないな。


そういえばジルも今日は休みだったか。


巡回に誘ったが、家族と過ごすから無理だと言っていたのを思い出す。


家族、、、レベッカ嬢は元気だろうか。


休日はどのように過ごしているのだろう。


流行りの焼き菓子でも手土産に持って行ったら、喜んで貰えるだろうか。


そんな事を考えながら歩いていると、テオが言っていた人気のカフェに着いた。


カフェ・ブルーム


新鮮なフルーツをふんだんに使ったタルトが人気で、花のフレーバーや砂糖漬けなど女性が喜ぶ、見た目も美しいお茶菓子が受けているとか。


なるほど。これは美しいな。


「あれ?あそこにいるの。」


「何だ?知り合いか?」


「あれはジルではないですか?」


テオが誰かを見つけると、アルフォンソとサミュエルも相槌を打つ。


「!!レベッカ嬢!!」


つい大きな声になってしまったが、あれは間違いなくレベッカ嬢だ!


偶然居合わせただけなのに、心が浮足立つ。


「え?何?何?レオ知り合いなの?」


「ってゆーか、あの髪の色はジルの妹だろ。」


「あぁ。間違いなさそうですね。ジルがこっちを睨んでます。」


「こわっ!」


「ジルの妹か、そーいや会ったことねーな。」


「私もですね。ジルはその手の話はいつもスルーしてますし、確かデビュタントもまだでしたね。」


「そういや、噂で聞いた事あるよ。テイラー家の家庭教師達が絶賛するほどのマナーと教養。そして可憐なその容姿は誰もが目を奪われ、微笑まれれば恋に落ちる、らしい。まぁ、ちょっと大袈裟に言ってるだけだろうけどね。」


「そこまで言われると、気になるな!」


「隠されると尚更!」


私が彼女から目が離せなくなっているうちに、3人の会話は続いていたようで


「「「よし!見に行こう!」」」


好奇心から、近くまで行く事になってしまった!




眉間にシワを寄せて睨むジルを見ながらも、レベッカ嬢の様子を伺う。


今日はラベンダー色のワンピースか。

サラサラの銀糸の様な髪に華奢な腕や腰。

エメラルドグリーンの瞳が綺麗で、白い項が艶めかしい。

ほんのりピンク色の頬と小さな唇も相まって、妖精のように可憐だ。


逸る気持ちを抑えつつ、彼女の前に立つ。


ジルが嫌そうな顔を隠しもせずに紹介する。


「エミリア、レベッカ。こちらレオ、アル、サミー、テオだ。(知ってると思うが)お忍びだから、敬称はいらんな。ライアンもそのつもりで。」


「え?」


「はい?」


エミリア嬢とレベッカ嬢がきょとんとしている。


そんなところもかわいい。


「は、初めまして。エミリア・ケリーです。以後お見知りおきを。」


エミリア嬢が戸惑いながらも挨拶をする。


「レベッカ・テイラーです。兄がいつもお世話になっております。」


レベッカ嬢が微笑みながら挨拶すると、ジルがレベッカ嬢を隠す様に間に立つ。


「おい!ジル!雑な紹介だな!こんにちは。綺麗なお嬢様方。アルフォンソ・トラビスだ。宜しく。」


アルフォンソがツッコミつつ苦笑している。


「まぁ、お互いにお忍びスタイルだから、仕方が無いですね。お会いできて光栄です。素敵なお嬢様方。私はサミュエル・レガロと申します。今度是非、お茶会に招待させて下さい。こんなに素敵なお嬢さん達が来てくれたら、母もきっと喜びます。」


「断る。うちもケリー家も伯爵位だ。公爵家に気軽に行ける身分じゃない。」


「大丈夫ですよ、ジル。うちは公爵家ですが、恋愛も結婚も自由ですから。」


「あ゛?」


「じゃあさ、うちはどう?うちはただの商家だし、気軽なお茶会ができるよ。それに最新のスイーツも食べ放題!イグレシアス商会って知ってる?僕はテオ・イグレシアス。よろしくね。」


「おい!テオ!抜け駆けするなよ!」


「じゃぁ、アルも誘えばいいじゃ〜ん。」


「お〜ま〜え〜ら〜!!」


「まぁまぁ、ジル。こんにちは、可憐なお嬢様方。私はレオンハルトだ。そうだな、ここは間を取って、私の家で茶会にしよう。ちょうど薔薇が見頃だし、母も喜ぶ。」


「間を取って無いし。王宮で茶会など、嫌な予感しかしないだろ。」


ジルがものすごく嫌そうな顔をしているが、負ける気はない。


「確かレベッカ嬢もエミリア嬢も婚約はしてなかったよね。婚約者のいない者同士、気軽なお茶会も悪くないだろう?」


「気軽な、ねぇ。」


ジルはまだ納得していないようだったが、ニヤッと笑うと


「まぁ、そうだな。二人もそろそろ適齢期だし、婚約者を探すのもいい時期かもしれないな。今年はデビュタントも控えているし、その前に知り合いを増やしておくのも悪くない。テイラー家もケリー家も基本は政略結婚だが。」


と、令嬢二人がポカンとしているうちに話を纏めてしまった。


もっと色々話したかったのに、


「悪いな。今日はこの二人に付き合うって約束なんだ。」


と言ってライアンと一緒に令嬢二人も連れて行ってしまった。

最後にレベッカ嬢がチラッとこちらを振り向き、軽く会釈をしたので、ジルにバレないようにこっそり手を降った。

あぁ、やっぱり可愛らしい。

こんなほんの僅かなやり取りさえも嬉しいと思うなんて、浮かれ過ぎだろうか。




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