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マシュー・スコット

「マシュー、すまないがこの書類の精査を頼む。」


「承知しました。」


レオンハルト王太子殿下から書類を受け取ると、中を確認し

、必要な部署へと段取りを付ける。


そう、私、レベッカ・テイラーは今、王太子殿下であるレオンハルト様の従者として貴族学園に通っている。


『マシュー・スコット』という名の伯爵令息として。




この国では15歳から3年間、学園に通う事が推奨されている。


一言で学園と言っても二通りあり、主に貴族が通う貴族学園と、平民が通う王立学園だ。


貴族学園では、経営学、経済学、乗馬や刺繍にダンス、剣術や国内外の情勢など、貴族としての教養を身につける。


社交も兼ねているので、お茶会、研究発表、演奏会や討論会なども盛んなのだ。


これに対し王立学園では、農業、工業、商業、伝統技術など、手に職を付けることを主に学ぶ。


平民でも成績優秀者であれば貴族学園に通えるし、将来王宮で文官や王宮騎士団に入ることも可能だ。


逆に、貴族であっても王立学園に通うこともある。


貴族家の次男や三男は基本的に爵位を継がないので、自分で生計を立てるために事業を起こす時に必要な知識と技術を学ぶのだ。


学園で培った知識と人脈は成人した後の人生に大きく関わってくる為、積極的に交流をはかり、精進している。


しかし、何事にも例外はある。


そのうちの一人が私、レベッカ・テイラーである。


表向きは、『病弱故に領地で療養しながら家庭教師をつけて学んでいる』ことになっている。


しかし実際は、日々の鍛錬により健康そのもので、学園で学ぶ学業の他に薬学や医学、王室マナーなど、間諜の仕事に付帯する知識と技術を身につけるべく教育された。


そして、兄であるジルベルトが卒業するのと入れ違いに、王太子殿下の側近候補として最終学年の1年だけ貴族学園に編入したのである。


王家からの依頼で王太子殿下の護衛として。


そういう事なので、もちろん変身して平均的な見た目の男の子の姿だ。


髪の色と目の色は変わらないけど。


王都から遠く離れたスコット伯爵家の次男として、ジルから王太子殿下に紹介され、従者としてしれっと任務にあたっている。


因みに、スコット伯爵家は実在している。


テイラー伯爵家の遠縁の家柄で、次男のマシューは別の任務で隣国に行っている。


そして、もう一人、この学園にはテイラー家の縁戚のエミリア・ケリーが潜入している。


平民の『エミリア』として。


彼女と私は同じ時期に毒と薬草学の講義を受けており、同い年ということもあって意気投合。


今回の任務の相棒に抜擢された。


そう、今回の任務。それは―――――




〜3ヶ月前〜


「え?隣国から毒薬が持ち込まれた?」


「しーっ!!声が大きい!!今、大急ぎで噂の出処を調べさせてるところよ。」


2ヶ月後に迫った学園の入学式準備に来ていた母娘が、制服の

採寸の為に訪れた店で話していたのを、従業員の女性が聞いて、すぐさまテイラー家に報告。


噂を聞いたのが港町で貿易の拠点となっていることから、万が一に備えて私服の騎士を配置するのと同時に王家にも報告し、対策が練られた。


制服の受け取りに来た母娘の周辺を徹底的に調べたが、誰に使うつもりなのかは分からなかった。


そもそも、何故そんな話を店でしていたのか。


見たところ、平民の普通のお嬢さんだ。


名前は『ナタリー』。


焦げ茶色の髪に同じ色の瞳。中肉中背で、ソバカスが頬に広がっている。


店員に変身して観察してみたが、これといった違和感などなかったし、平民だが貴族学園に入れたと言うから、相当勉強を頑張ったのだろう。


学園を卒業したら文官として働いて、家族に楽をさせてあげたいと言っていた。


そんな良い子が何故?


と、分からない事だらけなので、警戒しつつ様子をみることになった。


ナタリーの家の周りにはエミリアの実家であるケリー伯爵家が、そして貴族学園では平民の寮にエミリアが配置された。


エミリアにはナタリーと親しくなって情報を聞き出してもらう。


そして、万が一に備えてレオンハルト王太子殿下には側近候補としてマシュー・スコットである私、レベッカが付くことになったのだった。

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