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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
【第二部】“旅立ち”編
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【第二部】第三十九章 青髪の少女

【現在】

――宿屋――



「――そうして、うちらは奴らに“敗けた”にゃ。それで、奴らの起こした襲撃事件がきっかけになって、“和国”の妖獣達が蜂起(ほうき)して人間と戦争になったにゃ」


 アレンは、琥珀と稲姫から事の経緯を教えて貰った。


 妖獣側からしたら“人間が攻めてきた”となるのは容易に想像がつく。人との間を取り持つ“御使いの一族”がやられたのも、歯止めが利かなくなった要因かもしれない。そして、やはり――



「そうか……俺はやっぱり、“そいつ”に敗けたんだな」


 予想はついていたが、琥珀と稲姫から“過去の戦”についての顛末(てんまつ)を聞き、アレンは確信を持つに至った。


「“門を閉めて根源からの力の供給を断つ”。そして、“妖獣を身の内に取り込む”。――どちらも、途方も無い力だ。なるほどな……二人が止める訳だ」


 アレンは苦笑する。琥珀と稲姫には随分と気を回させてしまった。自分の不甲斐なさを情けなく思う。


「主様のせいじゃありんせん。――あいつが“異常”なんでありんすよ」

「勝つ手立ては今も探してるにゃ! きっと見つけて見せるにゃ!」


 二人から慰められ、アレンはまたみっともないところを見せてしまったことを恥じる。――そうだ。前を向かないと。次こそは勝つ! そのためには――



「――“神璽”、だったか? “青姫”に探してもらう様、頼んでたんだよな?」

「そうにゃ。青姫ちゃんは、今もそれを探しに旅に出てるにゃ」


 自分は記憶を失い頼んだことすら覚えていないのに、今も青姫は、かつての“お願い”に従い探してくれている。申し訳無さが込み上げて来るものの、今はそんな場合じゃないとアレンは自分を叱咤する。


「じゃあ、青姫と合流したいな。今はどこにいるんだ?」



 “青姫”の名を聞き、失われていた記憶が蘇りつつあった。


『我が君! 今度わらわの里へ共に参ろうぞ! ――なに、ちとわらわの伴侶として母上達に紹介するだけじゃ!』


 満面の笑みで自分の手を引く活発な青髪の少女だった。今も元気にしているだろうか。アレンは、どこかにいるだろう青姫に思いを馳せた。


――???――



「……ただいま」

「いやぁ、久しぶりのホームだな」

「そうだね。思ったより時間が掛かったかな」


 “青ノ翼”のレイン、ラルフ、エーリッヒは、ギルドホームに帰還した。


 三人はリムン国の北――人里離れた山奥の砦に居を構えていた。アレン達と別れ一仕事終え、ようやくの帰還だ。ホームの懐かしい匂いに三人の表情が弛緩(しかん)する。



「遅いぞ、其方(そなた)達」


 奥の部屋から出迎えが来る。ギルドメンバーではないが、行動を共にしている仲間――“青髪の少女”だった。少女はこの辺りでは見ない、鮮やかな色合いの着物を着ている。


「……ごめんね、“青姫ちゃん”。――はい、これお土産」

「おお! これは首都名店の菓子ではないか! 感謝するのじゃレイン!」


 青姫はレインから菓子を受け取るとソファーに座り、早速摘まんでうまうまと食べ始めた。


「して、首尾はどうだったのじゃ?」

「仕事は無難に。でもそうだな……面白い少年に会ったよ」


 お菓子のクッキーを(かじ)りながら発せられた青姫の何気ない問いに、エーリッヒが楽しそうに応える。



「“アレン”っていう子の卒業試験で対決したんだけどさ、――敗けちゃったんだよね」

其方(そなた)がか?」


 青姫が驚きで目を見開く。エーリッヒ程の実力者なら、大抵の者にそうそう遅れは取らない。ましてや、相手が子供なら。にわかには信じられないことだった。エーリッヒは気恥ずかしそうに頬をかき――


「最初は普通の子だと思ってたんだけどさ。――“自在に魔素を操ってるかの様な、見たことの無い魔法を使ったり”、“急に身体能力が劇的に跳ね上がったりしてさ”……圧倒されちゃったんだよね」

「……あれは異常」

「どうやってかは、未だにわかんねぇんだけどな」


 『珍しいものを見た!』と、エーリッヒ達は三人で盛り上がる。――が、それを聞き、キョトンとする者が一人。



「そ、その者は確かに“アレン”と申したのか? ――“神楽”ではないのか!?」


 必死な形相の青姫に、エーリッヒが肩を激しく揺さぶられる。


「……あ、青姫ちゃん、落ち着いて!」


 レインが羽交い絞めにし、青姫が引き離された。「す、済まぬ。取り乱してしもうた……」と、気まずそうに青姫が謝り、エーリッヒが(えり)を正す。


「いや、いいんだ。確かに“アレン”だったはずだよ?」

「……うん、そう聞いてる」

「俺もだ。――青姫、“カグラ”ってのは誰だ?」


 青姫は諦めきれない様で、ラルフの問いには直接答えず、なおも食い下がる。



「じゃ、じゃあ。近くに狐や猫の女子(おなご)はおらんかったかえ?」


 エーリッヒ達は顔を見合わせる。


「いや、いなかったね」

「……うん」

「“小さな女の子”はいたけどな」



「そ、それはどの様な女子じゃ!?」


 ラルフが気圧される程の勢いで青姫に肩を揺さぶられる。


「な、なんか変わったしゃべり方をしてたな」

「確か――“ありんす”だったかな?」

「……そう。それに、綺麗な黄金色の髪をしていた。――あ、あと、“猫”ならいたよ?」


「そ、その者達は、わらわのかつての仲間達じゃ! じゃあ、その“アレン”が――」


 青姫は確信した様子で、レインに振り向く。


「レインよ! 其方、その“アレン”と<念話>は出来るかえ!?」

「……う、うん。出来るけど」

「ならすぐ! わらわも交えてやって欲しいのじゃ!!」



――間もなくして、レインからアレンに<念話>が飛んだ。



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