【第二部】第二十六章 作戦会議
【新暦1072年】
――“御使いの一族”隠れ里・神盟旅団本部集会室――
神盟旅団員が揃う集会室内に神楽と稲姫、琥珀の姿もあった。そして、集会室内には自警団員も同席していた。これは異例なことだ。それだけ今回の作戦が重要ということなのだろう。
「ん? 神楽、何でお前もいるんだ?」
「今回の作戦には俺も参加しますので。“長老”の許可も得ています」
「ほんとかよ……大出世じゃねぇか!」
隣の旅団員に肩を小突かれ、神楽は頬をかいて照れる。そんな時――
「長老様がいらっしゃるぞ! 皆の者、静かに!」
騒がしい集会室が、団長の一言で静かになる。
「待たせたのぅ。――あぁ、よいよい。早速だが、作戦会議を始めるぞ」
長老――富岳が入室し、旅団員が敬礼しようとするのを、富岳が片手を上げて制止する。少しの時間も惜しいという様に、早速作戦会議が始まった。
◆
「つい先日、我らが“巡礼訪問”している東部地方の村落が、“謎の集団”に襲われたとの報を受けた。目撃者証言として、その集団は『神の力を集めている』と言っていたそうだ」
この報をもたらしたのは神楽と稲姫。――そして、襲撃を受けたのは、稲姫やキヌさん達村人だった。神楽の隣に座る稲姫の手がギュッと握られる。
「何て不遜な」
「許しちゃおけん」
ざわつく集会室内を富岳が片手を上げて鎮める。
「その報を受けて、この里の暗部を調査に差し向けた。――そして、奴らの次の狙いについての情報を入手した」
皆が静まり、富岳の次の言葉を待つ。
「この里だ」
集会所が一瞬静まり返り――
「返り討ちにしてやろうじゃねぇか!!」
「どうして里の場所がわかったんだ!?」
「随分舐められたものだな」
――すぐさま、集会室が怒声や混乱、戦意で満たされた。
◆
「静まれぃっ!!」
団長の喝で集会室内が再び静かになる。それを確認し、富岳が続ける。
「敵の戦力は未知数だ。中には、怪しい仮面を付けマントを羽織った実力者もいると聞く。――調査していた暗部が一人、消された」
集会室内に緊張が満たされる。
「連中は既にこちらに進軍中。大隊規模――五百から六百名程度がこの村に向かってきている」
「馬鹿な……!」
「そんな数、どうやって集めたんだ!?」
「他国の介入じゃないのか!?」
またざわつく集会室内を富岳が片手を上げて制止し、
「進軍速度から、村への到来は明後日昼頃と予測される。――以上より、非戦闘員の退避準備と、戦闘員による迎撃準備を進める。自警団員は非戦闘員の退避に、神盟旅団は奴らの迎撃に当たれ」
「女子供を逃がさんでも、そんな奴ら、俺達が叩き潰しちまえばいいでしょう!!」
「そうです! 数で敵う相手じゃないと、思い知らせてやりますよ!!」
一部から自信に満ちた声が飛ぶが――
「馬鹿者共が!! 敵の戦力は未知数だと言ったはずだ! そして、敵の中には実力者の存在を確認しているとも伝えたはずだ! その驕りが足元を掬うと知れ!!」
富岳から普段に無い程の大喝が飛ぶ。集会室内に再び静寂が訪れた。
「それでは、各々団長の指示に従い準備を進めろ。――時間は限られている。慌てず、迅速に対応しろ」
――そうして、“謎の集団”の来襲に備えた準備が一族総出で始まった。




