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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
【第二部】“旅立ち”編
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【第二部】第十八章 <闘気解放>

 雷牙と白巌の対決は雷牙の勝利で終わった。妖狼や村人達が歓喜の声を上げ雷牙の元に駆け付ける。アレン達も続いた。


「すごい雷牙! カッコよかった!」

「ハハハッ! そうであろう! そうであろう!」


 獣化したまま村の子供達にもみくちゃにされる雷牙はご機嫌だった。しっぽも振れており、いつもの威厳が()りを(ひそ)めている。


 妖猿達の様子を伺うと、地面に倒れ伏した白巌の元に集まっていた。白巌は未だ意識が戻らない様だ。妖猿達はどうしようかと困り果てている。


(しゃく)だが、奴を介抱してやるか。――誰か、治癒を行える者はいるか?」


 妖猿達の様子に気付いた雷牙が周囲に呼び掛ける。――すると、手を挙げて呼び掛けに応える者が一人。


「わっちができるでありんす」


 稲姫は村人や妖狼、妖猿達の衆目に晒される中、白巌の元に歩み寄る。アレンと琥珀、雷牙も後に続いた。


 警戒する妖猿達が立ちはだかろうとするが、琥珀が睨むとそれだけで道を開けた。――一体、どれだけ恐れられているのだろうか。でも、今はとても助かる。


 白巌の元に辿り着くと、稲姫は(かが)んで白巌に両手をかざす。稲姫の両手に周囲の魔素が色付き集まり、白巌の身体が光に包まれる。しばらくして――


「これでもう大丈夫でありんす」


 白巌の身体を包む光が霧散し、稲姫が立ち上がると、傷だらけだった白巌の身体が元通りになっていた。妖猿達が歓喜し、稲姫に寄ってくる。


「キキィ!♪」


「わ! な、何でありんすか!?」

「稲姫ちゃんはうちのにゃ!」


 どうやら妖猿達は稲姫を胴上げしようとしていた様だが、琥珀が脇からインターセプトする。妖猿達に触れさせまいと稲姫を抱き上げたのだ。――妖猿達はちょっと寂しそうだ。


「すまないが、誰かこの者を休ませてはくれぬか?」


 白巌を顎で指し、雷牙がどこかの民家に寝かせてもらう様に頼むが――



「こいつはうちを壊したんだ! 早く追い出して!」


 小さな子供が目に涙を溜めて白巌を睨んでいた。「こら! 雷牙様に失礼でしょう!」と、慌てて母親らしき女性が子供を止めに入る。


――見覚えのある子供だと思ったら、巨石で家を潰され泣いていた子供だった。この子には文句を言う権利があるだろう。


「其方の言うことも(もっと)もだ。――おい! 猿共! 貴様らの大将の不始末、自分達で尻を(ぬぐ)え! この村人の家を直すのだ!」


「キ、キキィ!?」

「キキ!?」


 妖猿達は慌てふためく。家など建てたことも無いのだろう。


「――仕方ねぇ。俺達が教えるから、お前たちは手伝え」


 ガタイのいい村人達が妖猿達を連れて、資材置き場へと向かって行った。


「こ奴らに其方(そなた)の家を直させる。すまないが、今はこれで納得してもらえんか?」


 涙目ながらも子供がうなずき、母親らしき女性が「こら! ありがとうございますでしょ!!」と(しか)っている。


――何はともあれ、これで何とか事が収まりそうだ。アレンはホッと一息ついた。


――村長宅――



 結局、白巌は村長宅で休ませて(もら)い、アレン達や雷牙も集まっていた。村長夫人の出してくれたお茶とお茶請けで一服着く。



「それにしても雷牙、凄かったな」

「そうであろう! そうであろう!」

 

 雷牙は人化しているが、やはり上機嫌だ。お茶請けの焼き菓子を豪快に食べている。



「琥珀の力は何だったんだ? 初めて見たが」

「あれは<闘気解放>にゃ。周囲の気を取り込んで、身の内で闘気に練り上げて解放するのにゃ」

「闘気?」

「説明が難しいにゃ……う~ん。――その人に合う様に気の質を変えて、より濃密で莫大なエネルギーにする、みたいな感じにゃ」


 腕を組み、頭を悩ませながらも琥珀が教えてくれる。


「なるほど。<肉体活性>が通常の気での身体強化だとするなら、<闘気解放>は自分に合う様に練り上げた闘気での身体強化、みたいな感じか……俺にも使えるかな?」

「以前のご主人は使えてたけど、今はまだ力が回復しきってないから難しいかもしれないにゃ」


 ガッカリするアレンだが、稲姫と琥珀から励ましを受ける。


「主様は順調に力を取り戻してるでありんすよ!」

「そうにゃ! 焦らず頑張るにゃ!」


 アレンも二人に笑みで返す。


「そうだな。焦っても仕方無い。――着実に力を付けていくしかないな」


 盛り上がるアレン達だが、ふと(そば)から声を掛けられる。



「すまん。話についていけんのだが」


 置いてけぼりにされ、少し不貞腐(ふてくさ)れていた雷牙だった。


「そうだな。雷牙には話しておくか」



――アレンが稲姫と琥珀に同意を求めると二人もうなずいたので、アレン達は事の経緯を雷牙に語って聞かせた。



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