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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
【第二部】“旅立ち”編
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【第二部】第十六章 妖狼の誇り

――ガラート村――


 妖猿の撃退後、アレン達は妖狼や村人達に宴でもてなされた。



「んくっ……んくっ……んくっ!」

「おお! 結構いける口ではないか!」


 人化している雷牙から酒を注がれ、アレンは一気に酒杯を飲み干す。雷牙も既に出来上がってる様で、赤ら顔でご機嫌に、焼いた鶏ももの骨付き肉に食らいついている。


「雷牙ずるいにゃ! うちにも!」


 こちらにも出来上がってる者がいた。赤ら顔の琥珀は雷牙の皿から骨付き肉を奪うと――


「うみゃ~!!♪」


 がぶがぶと骨付き肉にむしゃぶりついた。


「琥珀! それは我のだぞ!」

「まだまだたくさんありますから、お好きなだけどうぞ♪」


 雷牙が琥珀に不平を漏らすが、村の女性が新しい大皿を持ってきてくれた。鹿肉のステーキが山菜と共に盛られている。


「豪勢ではないか! うむ、実に良いぞ!!」

「ご馳走にゃ~!!♪」


 新たなご馳走は雷牙と琥珀の新たなターゲットになり、二人がうまうまと貪り食う。――いつの間にか、雷牙も琥珀に「殿」付けはしなくなっていた。打ち解けている様で何よりだ。



「主様! これも美味しいでありんすよ!」


 稲姫は酒を飲んでいないが、上機嫌に果物の盛られた皿を持って来ていた。食べやすいサイズにカットされた果物が種々盛られており、色彩も豊かで食欲をそそる。


「一つもらおうかな」


 アレンは稲姫が手に持つ皿から果物を一つ取り口に運ぶ。甘酸っぱい果実の汁が口いっぱいに広がり、サッパリしててとても美味しい。



――アレン達は村人や妖狼達と大いに盛り上がり、そうして夜が()けていった。


【翌日】


 

 アレンは轟音と地響きで目を覚ます。昨晩は村長宅に雷牙と共に泊めてもらい、語り合ってから寝ていた。


 部屋に雷牙の姿は無く、家の外から村人の怒号や悲鳴が聞こえる。


「ご主人! 稲姫ちゃん! 外に出るにゃ!」

「な、何でありんすか?」

 

 琥珀や稲姫も異変に気付いて起きていた。琥珀はアレン達よりも早くに起きたのだろう。アレンと稲姫を急かし、外に出ようとする。


「またあいつらか……? とにかく、様子を確認しに行くぞ!」

 

 アレンは双剣を腰に佩き、琥珀と稲姫を連れて急いで外に出た。



 村長宅を出て周囲を確認すると、民家の一つに巨岩が突き立っていた。屋根や壁を突き破っており、その質量の凄まじさを物語っている。


 少し離れた場所で、壊れた家を見ながら泣き叫ぶ子供を、母親だろう女性が手を引っぱり連れて行こうとしている。


「ひどい……」


 隣の稲姫から(つぶや)きが漏れる。


「ご主人、あそこにゃ」


 琥珀の指さす先――村の入口付近を見ると、妖猿を引き連れ、白髪の偉丈夫が立っていた。獣化した雷牙が妖狼達を率いて相対している。


――アレン達もすぐさま雷牙の元に向かった。



「昨日は随分俺の部下が世話になったようじゃねぇか。お礼参りに来たぜ?」


「――まだ懲りないか、猿共めが」


 雷牙が身体に紫電を纏う。村の上空に雷雲が形成され、ゴロゴロと音が鳴る。――アレン達が入口に着いた時には、もう臨戦態勢だった。いつ戦いの火蓋が切られてもおかしくない。


 白髪の偉丈夫がアレン達に気付き、声をかける。


「よう。俺の部下をいたぶってくれたのはお前らか? 舐めた真似――」


 最後まで言葉を発することなく、白髪の偉丈夫の姿が()き消えた。――離れた場所から、凄まじい轟音が響く。


 音の発生源を見ると、先程民家に突き刺さっていた岩に偉丈夫が埋め込まれていた。ヒビが放射状に入り、その威力の凄まじさを物語っている。



「――琥珀?」


 アレンは凄まじい気配を感じ、元を辿ると蹴りの残身をとる琥珀がいた。いつもの飄々(ひょうひょう)とした振舞いは微塵も感じられず、肉眼でも視認できる程の凄まじいオーラを身体に纏っていた。


 いつものライトグリーンの両目は今では金色に輝き、瞳孔が縦に割れている。


 琥珀は悠然と偉丈夫の元に歩み寄ろうとするが――



「――待つのだ琥珀っ!!」


 琥珀を大声で呼び止める者がいた。――雷牙だった。雷牙は、歩みを止める琥珀の前に回り込む。


「其方は強い。あの妖猿の神獣――白巌(ビャクガン)といえど、敵ではないだろう。――だが! これはもとより、我ら妖狼と妖猿の戦。ここは、我に出番を譲ってはくれぬか?」


――このまま琥珀に助けられるのは、妖狼のプライドが許さない。


 雷牙の目がそう物語っていた。


 琥珀はしばらく雷牙の目を見据える。――そして、ふっとオーラを解いた。


「わかったにゃ。――ここは雷牙に任すにゃ」


 いつもの琥珀に戻り、雷牙に笑みを送る。


「任された。其方らはそこで見ておるがよい」



 雷牙は白髪の偉丈夫――白巌の元に歩み寄る。


「白巌よ、其方の相手はこの我だ。――いつまで寝たふりをしている。さっさと起き上がらんか!」


「――チッ……。どいつもこいつも舐めてやがる……!!」


 白巌は埋め込まれていた岩を拳で叩き割り、起き上がる。


「マズはお前だ。――その後は、そこの猫だ。お前はただじゃおかねぇ」


 白巌は琥珀を指差し闘志を燃やすが、琥珀はどこ吹く風だ。


「棍を渡せ」


 白巌は近くにいた妖猿から棍を受け取り、雷牙に向けて構える。



「犬っころとの一騎打ちってのも悪くないな」

「ぬかせ。――猿ごときが」



――“妖狼”雷牙と“妖猿”白巌、トップ同士による戦いの火蓋が切って落とされた。



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