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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
【第二部】“旅立ち”編
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【第二部】第十三章 東から来た妖猿

――ガラート村・村長宅――



「さて、何から話そうか……」

「ここ最近、『化け物が出る』って都市で噂になってるんだが、それは雷牙のことか?」


 雷牙がどこから話すべきか迷ってる様子だったので、アレンはストレートに聞いてみる。


「ん? 我は、お前達以外には何もしていないぞ? ――ああ、そういうことか」


 雷牙には心当たりがあるのだろう。()に落ちた様子だ。


「話の核心だな。その“化け物”は、今、我々と交戦中の者達だ。――恐らくはな」


 雷牙が少し苦々し気に言う。


「誰と戦ってるにゃ?」

「山道には狼のモンスターしか出なかったでありんすよ?」


 琥珀と稲姫も話に入ってくる。アレンとしても気になるところだ。雷牙は重い口を開く。



「――東から来た妖獣、“妖猿(ようえん)”だ」



「奴らの住処は本来、ここより遥か東にあるのだ。――どういう事情か、最近ここらに出没するようになってな」


 雷牙はそこまで言うと、茶を一杯飲み干しお盆に戻す。そばに控えていた村長夫人がすぐに新しいのを注いでくれた。雷牙は会釈(えしゃく)して湯飲みを受け取り話を続ける。


「この山に住む我らや村の住人を襲う様になったのだ」

「雷牙様達が守ってくださって、何とか無事でいられるのでございます」


 雷牙に続き、村長が言葉を()ぎ足す。


「何故襲うんだ? 縄張り争いみたいなものか?」

「そんなところだ。――いい迷惑だ」


 雷牙の機嫌が悪い。当たり前だが、だいぶ腹を立ててるな。


「妖猿達も住む場所があればいいんだろう? 話し合えないのか?」


 アレンは皆が納得できる落としどころを探そうとするが――


「話し合おうにも、話にならんのだ」

「言葉が通じないにゃ?」


 琥珀も疑問に思ってるようだ。


「いや、会話はできるのだ。だが如何(いかん)せん、『この土地は頂く』の一点張りでな」

「そりゃ酷い」


(弱肉強食という言葉はあるが、外から来た奴にそう言われたらキレるな。俺でも)


 アレンは雷牙や村人達に同情する。


「それで、どっちが優勢なんだ?」

遺憾(いかん)だが、あちらの方が優勢だな。――個々の力はそれ程でもないが、何分(なにぶん)、奴らは数が多いのだ」


 雷牙が言い、村長夫妻がうなだれる。



「ご主人、何とかしようにゃ」

「わっちも戦えるでありんすよ」


 琥珀と稲姫は、雷牙達や村のために戦いたがってるな。アレンとしても異論は無いが――


「ここに来る前、俺達を襲ったのはどうしてだ?」


 一応、理由は聞いておきたかった。


「ここが戦地と知っていて、関係の無い旅人を迎えるわけにもいかないだろう」


 雷牙の言い分も(もっと)もだな。


「其方らをここに呼んだのは、琥珀殿と稲姫殿が我と同じ“神獣”で、奴らに襲われても太刀打(たちう)ちできるだろうというのと、――妖獣と()()其方(そなた)に興味があったからだ」


 雷牙がアレンを見据(みす)える。


「やっぱり、妖獣と人間が交流するのは(めずら)しいか?」

「むしろ、普通は敵対するであろう? 我らが特殊なのだ。――と、其方らに会うまでは我もそう思っていた」


 雷牙は面白そうに、くつくつと笑う。


「だから興味があったのだよ。其方らの話も聞きたいところだが――」



――雷牙が話してる途中で、村中に警鐘(けいしょう)が鳴り響く。


「奴らだ。――全く、いつも邪魔をする」


 雷牙が億劫(おっくう)そうに立ち上がる。


「其方らは客人だ。終わるまでここにいるとよい。――猿どもには指一本触れさせんよ」


――アレン達の返事も聞かずに、雷牙はさっさと家を出て行ってしまった。


「ご主人!」

「主様!」


 琥珀と稲姫が真剣な顔でアレンを見つめる。――アレンとしても、気持ちは同じだ。


「ああ、俺達も行くぞ。――だが、まずは敵の戦力調査だ。俺達が加わってもどうしようもないなら、増援を手配するしかないからな」


「はいにゃ!」

「わかりんした!」



――琥珀と稲姫を引き連れ、アレンも村長宅を後にした。



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