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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
【第二部】“旅立ち”編
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【第二部】第十二章 “妖狼”雷牙

――トニトラス山脈・ガラート村付近の山道――



「俺の名はアレンと言う! こちらに争う意志は無い! 俺達は、最近交流の途絶えているガラート村の安否を確かめに来ただけだ!」


 アレンは狼に語りかける。目の前の地面は焦げており、またあの落雷が来たらと思うとぞっとするが、これでしっぽを巻いて帰るくらいなら、エクスプローラーになんてなるべきじゃない。


 もう一つの目的、「化け物が出る」という噂の調査については伏せておく。まずは、この場を切り抜けるのが優先だ。


「我の力に物怖じしない、その胆力は認めよう。――して、その二人は妖獣だな?」


 狼は琥珀と稲姫を見回しながら聞いてくる。――よかった。会話をしてくれる気になったみたいだ。


「うちは琥珀にゃ」

「稲姫でありんす」


「何故其方(そなた)らは人間と行動を共にする? ――その人間に従わされているのか?」


 狼はアレンを見ながら二人に問う。問われた二人はというと――


「何でって、一緒にいたいからにゃ」

「そうでありんす」


 何をおかしなことを聞くんだと言うかの様に、二人が即答する。狼も一瞬何を言われたのか分からなかった様で固まっていたが、すぐに気を取り直すと――


「フフフ……フハハハハッ!」


 (こら)え切れないとでも言う様に笑った。


「何がおかしいにゃ?」

「何を考えてるのか、よくわかりんせん」


 琥珀と稲姫としては笑われて面白くない。狼は息を整えた後、弁明する。


「これは失礼した。――まさか、この地に我らと同じ様に人間と交わる妖獣がいるとは思わなくてな」


 狼の態度が急に柔らかなものになった。アレンと琥珀、稲姫は互いに顔を見合わす。



「我は雷牙(ライガ)と申す。“妖狼(ようろう)”の神獣だ」



其方(そなた)らなら、村に入れても問題無かろう。付いて来るがいい」


 狼――雷牙は、アレン達を村へ案内してくれた。それまで雷雲と激しい雨に見舞われていたが、今は嘘のように晴れ渡っている。


――まさか、雷牙は天候を操作できるのか?


 アレンはどういう状況かを雷牙に聞くが、「村の中で落ち着いて話せばよかろう」とのことで、大人しく付いて行くことにした。


――ガラート村――



「あ、雷牙だ!」

「雷牙ぁ!」


 村に着くと、子供達が雷牙を見つけるなり走り寄ってきて、わしゃわしゃと毛をなでている。随分と打ち解けてるみたいだな。


――見たところ、ガラート村は無事の様だ。最悪の状況も想定していただけに、アレンはほっと一息つく。



「これは雷牙様、お戻りになられましたか。――して、この方達は?」


 老人がこちらに気づき、近寄ってくる。


「客人だ。すまないが村長、話がしたいので、これから其方の家に行ってもよいか?」

「ええ、構いませんとも。――では、ご案内しますぞ」



 雷牙がそう頼むと何事も無く、村長が雷牙とアレン達を家に通してくれた。また、雷牙が引き連れていた狼達は、村に着くと、解散とばかりに方々(ほうぼう)に散らばって行った。


――村長宅――



「お茶です、どうぞ」


 村長夫人が、俺達皆にお茶を配ってくれた。――雷牙にも湯飲みが渡される。


(狼じゃ飲めないだろ)


 とアレンは思っていたが――


「さて、頂こうか」


 雷牙が光に包まれたと思ったら、稲姫や琥珀と同じように人化した。体格が良く日に焼けた青年という感じだった。顔も美形の類に入るだろう。そしてやはり、耳としっぽが生えていた。


 稲姫達と同様に、どうやって作ったのか服を着ている。東方の着物ではないが、どこかの民族衣装のような装いをしていた。


「ん? どうした? ――ああ、この姿か」


 雷牙は自分の姿を見回して言う。


「そこの琥珀殿も稲姫殿も、我と同じ様に人化しているではないか。今更(いまさら)気にすることでもあるまい」

「まぁ、そうだな」


 雷牙の言う通り、アレンも気にしないことにした。


「では、話そうか。――ここで何が起きているのかを」



――そうして、アレン達はガラート村の事情を雷牙と村長から聞かされるのだった。



 

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