表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
【第二部】“旅立ち”編
66/494

【第二部】第十一章 トニトラス山脈

――トニトラス山脈(ふもと)・山道前――



「ここか……」

「到着にゃあ!」

「やっと着いたでありんすね」


 アレン達はトニトラス山脈麓の山道前に辿り着く。野宿を挟んだとはいえ、リムタリスからおよそ一日歩き続け、稲姫の言う様に、アレンもやっと着いたかという思いが強かった。――琥珀はぜんぜん元気だが。


「目的を再確認しておくぞ? この山脈にある山村――“ガラート村”まで山道を通っていく」

「『化け物が出る』って噂があるんだったにゃ?」


 琥珀の問いにアレンは頷き返す。


「そうだ。その化け物の噂のせいで、行商人が寄り付かなくなってるらしい。実際に山道を通って村に行くことで、化け物がいるかどうかを確かめ、――いた場合、排除できる様なら排除する」

「難しそうだったら?」


 今度は稲姫からだ。アレンは首を横に振り、


「相手が強そうで、俺達で太刀打ちできなさそうなら引く。今回の依頼はあくまで、山道や村の状況確認で、脅威の排除は二の次だ」


 琥珀と稲姫がうなずく。


「まぁ、会ってみないとわからないにゃ。それから決めればいいにゃ」

「そうでありんすね」


 琥珀と稲姫は肝が据わってるというか、物怖じしないな。頼もしいことだ。


「じゃあ、このまま山道を進むぞ。周りを確認しながら進もう」



 そうして、アレン達は山道を登り始めた。



「何も出ないな……」

「まだ村までは距離があるにゃ?」


 琥珀の問いに、アレンはデバイスのマップ表示で村までの距離を確認する。


「あと数刻(すうこく)歩けば着きそうだ。暗くなる前には着くと思うが」

「何も出ないならそれが一番でありんすけどね」

「ああ、そうだな」


(稲姫の言うことも(もっと)もだ。何も無いなら無事を確かめればいいだけだ)


――そう考えた矢先のことだった。



「グルルルル……!」


「あ、出たにゃ」

「モンスターか……“ファングウルフ”。この山脈に生息する狼のモンスターで、巨大な牙が特徴だ」


 アレンはデバイスから、モンスターについての情報を読み出す。デバイスには先人エクスプローラー達の調査結果が蓄積されており、この様に冒険に役立てることができる。


「単体脅威度D(マイナス)……蹴散らすぞ!」

「了解にゃ!」


 アレンの合図で琥珀がファングウルフに瞬間移動もかくやのスピードで肉薄し、蹴りをかます。


 ファングウルフの牙がへし折れ盛大に吹っ飛ぶ。山道脇の樹に激突し、振動で樹からたくさんの鳥が飛び立った。


――瞬殺だったな。


「……ちょっと憐れだったな」

「弱すぎるにゃ」


 琥珀に出会ってしまった自分の不幸を呪ってくれ、とアレンはファングウルフの遺体に黙祷を捧げる。


「化け物じゃなかったでありんすね」

「そうだな。この辺にいるのがわかってるモンスターだったし。――でも、注意して進むぞ」


 うなずく琥珀と稲姫を連れ、アレンは村への山道を進んだ。



「なんか、天気が急に悪くなってるにゃ?」

「そうだな。山の天気は移ろいやすいとは言うが、――これは明らかにおかしい」

「ビショビショでありんす……」


 あれから山道をしばらく進み、村まであともう少しかというところで、急に天気が悪くなった。雨が降りしきり、雷がゴロゴロと鳴る。アレン達はカバンから雨具を出して着込むが、既に結構濡れてしまっていた。



「――ん? 何だ?」


 アレンが坂道の先を見ると、行く手を阻むように、何かが複数立ち塞がっていた。琥珀がすぐさま臨戦態勢に入る。


(あれは…………狼?)


 灰色の体毛に覆われた狼の群れだった。――中央の一体の体躯が特に大きく、威圧感を放っている。



「立ち去れ、人間……」


「――男の声?」

「ご主人、どうするにゃ?」

「話してみよう」


 琥珀と相談し、アレンは狼に話しかけようとするが――


 雷鳴が轟き、アレン達の目の前に巨大な雷が落ちた。瞬時のことで、誰も反応ができなかった。



「もう一度言う。ここより立ち去れ、人間……」



――狼は大きな体躯に紫電を纏い、威風堂々たる(さま)でアレン達を見下ろしていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ