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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
【第二部】“旅立ち”編
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【第二部】第九章 会得 <幻惑魔法>

――野営中――



「しっぽが増えてどうだ? 何か変わりは無いか?」


 夕食を食べ終えて一服しながら、アレンは稲姫に調子はどうか聞いてみる。


「ふふふ……」


 稲姫のしっぽが左右にフリフリされる。二本になって。『よくぞ聞いてくれました!』とばかりに、顔もどこかドヤ顔だ。


「なんと! <幻惑魔法>を使えるようになったでありんすよ!」


 稲姫が腰に手を当て、胸を張って言う。


「昔使えたって言ってたもんな。おめでとう!」

「おめでとうにゃ!」

「ふふん♪」


 アレンと琥珀が素直に褒め称え、稲姫も得意げだ。


「それに、魔素の総量も増えたから、身体も強くなったでありんすよ」

「道中、力が足りないからってしょんぼりしてたもんな。とにかくよかったな!」


 いいことづくめだった。そこで、アレンはふと気になる。


「稲姫が<幻惑魔法>を使えるなら、俺にも使える?」


 自分を指差しながら稲姫に聞いてみる。


「前は使えたから、使えるはずでありんすよ。やってみるでありんす」


 前っていうのは、記憶を失う前、神楽(カグラ)時代のことだな。でも――


「どうやってやるんだ?」


 <幻惑魔法>をかける相手が……あ、いるな。一人! アレンと稲姫は琥珀を見つめる。


「う、うちにゃ!?」


 琥珀が後退(あとずさ)る。――気持ちはわかるが、


「琥珀しかいないんだ。な? 魔法かけていいか?」

「琥珀ちゃんならきっと効きやすいでありんすよ」

「なんとなくバカにされてる気がするにゃ……」


 琥珀がどことなくムスっとしているが、拒否はしないのでOKなのだろう。



――なので、やってみることにした!



「……琥珀、覚悟はいいか?」

「か、かかってこいにゃ!」

「いい覚悟だ」

 

 アレンはさっそく、琥珀に<幻惑魔法>をかけようとする。が――


「やっぱりわからん。稲姫、先に俺にかけてみてくれ」

「わかりんした」


 稲姫に<幻惑魔法>をかけてもらい、感触を確かめてみることにした。 


「…………」


 稲姫がアレンに手を向け、集中する。アレンに向けて、稲姫の手から、何か透明なものが飛んできた。


――一瞬、アレンの意識が揺さぶられる。意識を集中して前を見ると――


「あれ? 稲姫、大きくなったか?」


 特徴は同じだが、いつもの稲姫よりも大きい。しっぽも三本だ。


「主様は、以前のわっちを見てるのでありんすよ」


 稲姫の声だが、どことなく大人っぽい落ち着きがある。鈴を転がすような澄んだ美しい声音だ。


「そうか……これが<幻惑魔法>か」


 アレンは目を閉じ、自分に何か変化が生じていないか、意識を内側に向けてみる。かけられた直後、一瞬だが、意識が揺さぶられた。――であれば、脳か。


 注意を自分の頭に向け、<魔素操作>習得の際に得た魔素感知を向けてみる。すると――


「――あった。これか」


 人間は自分の体内に魔素を持たない。なのに、今は頭の中に魔素を感じられる。その形を読み解く。


「なるほど。自分の思考イメージを魔素に乗せて、相手の脳に刷り込む感じか」


 アレンは目を開け、稲姫を見る。稲姫は、よくできましたとばかりに優しく微笑み――


「じゃあ、解除するでありんすね」


 幻惑魔法が解かれ、アレンが正気に戻った。



――目の前には、先程よりも小さい、今の稲姫が笑顔で立っていた。



「よし。じゃあ、感覚を忘れない内に――いくぞ琥珀!」

「は、はいにゃ!」


 急に名を呼ばれた琥珀の背筋がピンとなる。怖いようで、ソワソワ落ち着きが無い。アレンはすぐさま、思い浮かべた思考イメージを、手に集めた魔素に乗せて目の前の琥珀に放つ。


 魔素の塊が琥珀の頭部に吸い込まれる。――そして、その効果はすぐさま現れた。


「あ、あれ? 昔の稲姫ちゃんにゃ?」


 周囲を見回す琥珀は稲姫に目を止め、変化に驚く。


「うんうん。成功だ!」

「さすがは主様でありんす!」


 アレンと稲姫は喜びながらハイタッチした。


「ちょ、ちょっと! 終わったなら早く解いて欲しいにゃ!」


 焦った琥珀が手を振り回す。


「悪かった悪かった。――これでどうだ?」


 <魔素操作>で、琥珀の頭に刷り込んだ魔素を除去する。


「よ、よかったにゃ。元通りにゃ」


 琥珀はほっと胸をなでおろした。やっぱり怖かったのだろう。


「でもこれで、無事に俺も使えることがわかったし、万々歳(ばんばんざい)だな!」

「この調子でどんどん強くなるでありんすよ!」

「よかったにゃ!」


 新たな力の会得を三人で喜び合う。



――そうしてアレンは、稲姫の<幻惑魔法>を会得した。


 

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