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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
【第二部】“旅立ち”編
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【第二部】第七章 カチンと来た

――支部長室――



「あなたにこれを渡しておくわ」

「これは……“デバイス”ですか?」


 支部長のイザベラからエクスプローラー試験の課題を伝えられたアレンは部屋から退出しようとするが、イザベラから呼び止められ、ある物を渡される。それは学校で見慣れたものだが、デザインが洗練されていた。


「ええ。エクスプローラー用のデバイスよ。これを使いこなして依頼を果たすのも課題のうちよ」

「なるほど……それでは、遠慮なく」


 渡されたデバイスは従来機同様、腕輪型だ。アレンは左腕に装着する。


「使い方はわかるわね?」

「学校で習った程度なら」

「念のため確認した方が良さそうね。マップを開いてみなさい」


 イザベラに言われるまま、アレンはデバイスを操作しマップを表示させる。


「結構細かなところまでマッピングされてるんですね」

「ここは都市だからね。これから行くトニトラス山脈は、山道から外れたらほとんどマッピング情報は無いかもしれない」

「なるほど……気を付けないといけませんね」


 アレンは神妙に(うなず)くが――


「エクスプローラーにとって、未到達地域のマッピングも仕事のうちだから、機会があればやってみるといいわ。報奨金も出るわよ。……あなたが正式にエクスプローラーになれたらだけど」


「はい。今回は山道を通ってのガラート村の調査なので道から外れない様にしますが、機会があれば是非」



――そうしてアレンは、エクスプローラーの必需品、エンハンスドデバイスを入手した。

 

 

 アレン達は支部長室を出て階下に降りる。協会内にたむろするエクスプローラー達からの視線にさらされ、居心地が悪い……。


「あ、どうなりましたか?」


 受付のお姉さんが気さくに声をかけてくる。


「試験を受けることになりました。これからトニトラス山脈に行ってきます」


 アレンがそう答えると、協会内がざわつく。


「あそこは『化け物が出る』って知らないのか……?」

「俺達だって近付かねぇってのに」


「悪いことは言わねぇ、やめときな」


 話を聞いていたエクスプローラーの一人が近づいて来てアレンに言う。心配してくれてるのがわかるので、邪険にも出来ない。


「でも、困ってるみたいですし……。それに、試験課題なので」


 アレンは頬をかき、無難に答えようとするが――


「大丈夫にゃ! うちがいれば問題無いにゃ!」


 琥珀が胸を張って主張する。


「わっちもわっちも!」


 稲姫もアピールを忘れない。


「おいおい、お嬢ちゃん達。ピクニックじゃないんだぞ?」

「お気楽なもんだ。泣きべそかいて戻って来なきゃいいがな」


 嫌な笑いが協会内に轟く。受付のお姉さんはオロオロとしている。



――普段温厚なアレンも、仲間を侮辱されてカチンと来た。



「あんたらは、震えてここで縮こまってればいい」


「ぁあ!? なんだその態度は!!」

「まだエクスプローラーになってもないガキが!!」


 協会内が殺気立つ。


「そこに異常があり、困った状況になってるのに、確かめにも行けない臆病者にはなりたくないので。――失礼します」



――アレンは琥珀と稲姫の手を引き、さっさと協会の外に出る。後にはエクスプローラー達の怒号が鳴り響いていた。


――支部長室――



「あははっ! 面白い子じゃないか!」

「イザベラ様……見てないで止めてくださいよ」

 

 アレンとエクスプローラー達のひと悶着を二階から眺めていたイザベラと秘書は、それぞれに感想を漏らす。イザベラは腹を抱えて笑い、そんなイザベラを秘書が呆れた顔で見ていた。


「いやぁ。礼儀正しい優等生に思ってたが、中々どうして……楽しみじゃないか。この先が」

「ルーカス様を思い出しますね」

「確かにね。――あの人も、今頃何してるんだか……」



 イザベラは懐かしそうに目尻を下げ、優し気に微笑む。秘書はそんなイザベラの横顔を、ただ嬉しそうに見つめるのだった。



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