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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
【第二部】“旅立ち”編
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【第二部】第五章 首都リムタリス

――首都リムタリス――



「おお! 人がいっぱいだにゃあ!」

 

 あれから街道をひた進み、アレン達三人はようやく首都リムタリスに到着した。稲姫と琥珀には耳としっぽを隠してもらっている。


「え~、疲れるから嫌にゃ」

「人がいるところだけでいいからさ。……我慢してくれたら、今日の夕飯はお魚だ!」

「頑張るにゃ♪」


 嫌がる琥珀をなだめながら、アレンは商店街に向かう。


「まずは琥珀の服を買わないとな。やっぱり、この国じゃ着物は目立つから」

 

 すれ違う人が皆、琥珀に振り返る。――中には危なそうな視線を向けてくる男もいて、その度にアレンが睨みを利かせた。



――アレン達は、しばらく三人で商店街の通りを歩いた。


――服屋にて――



「ご主人、どうにゃ?♪」

「お、おお~! 似合ってるぞ、琥珀!」


 服屋を見つけ、琥珀の試着ショーをする。店員もいい金づるだと思ったのか、次から次に琥珀を着せ替える。


「わっちも!」

「稲姫も似合ってるぞ。やっぱり、稲姫は可愛い系が合うな」


 稲姫も負けずと試着ショーを繰り広げる。こちらには別の店員がついていた。



「ありがとうございました~♪」


 琥珀と稲姫の服を数着ずつ買う。エクスプローラーになって僻地(へきち)に旅立つこともあるかもしれないから、今のうちに買いだめをしておきたかったのだ。



――お財布の中がだいぶ寂しくなり、冷や汗が出るが……。



「にゃんにゃん、にゃ~ん♪」

「琥珀ちゃん! あっちの出店もおいしそうでありんすよ!」


 琥珀と稲姫がご機嫌だ。出店のフードを食べまくっている。


 ちなみに、琥珀は買った服の一着を既に着ている。しかし、琥珀自体に惹かれているのだろう、振り向く人は多い。


 そんなこんなで散財するが、


(まだだ……まだ俺の財布は負けんよ! ――しかしながら、ちょっと心許ないのも確か……)



「二人とも、そろそろ宿に行かないか? 結構いい時間だしさ」



――アレンは二人を連れて宿屋に向かうことにした。


――宿屋――



「いらっしゃいませ。三名様でしょうか?」

「はい。空いてますか?」

「部屋は何部屋ご用意しましょうか?」


 宿屋のお姉さんに聞かれるが、


「ん? 一つでいいにゃ」


 琥珀が頭にクエスチョンマークを浮かべながら答える。


「一人部屋か二人部屋しかございませんので……3人だとベッドが足りないのです」

「ベッドは一つでいいにゃ」


 琥珀が当然とばかりに応えるが、お姉さんの顔は真っ赤だ。近くで掃除をしている女の子が、水の入ったバケツをひっくり返してしまった。


「さ、左様でございますか」


 真っ赤な顔でお姉さんがアレンの顔をチラチラ見てきて凄くいたたまれない……


「……一人部屋でお願いします」


 この羞恥からさっさと抜けたく、一人部屋を申し込む。……お財布事情もあったが。


「か、かしこまりました! すぐにご案内致します!」


 お姉さんがアレン達を部屋に案内してくれる。



――背後から、先程の女の子と別の子の黄色い声が聞こえてきた。


――部屋内――



「では、ごゆっくりどうぞ♪」


 お姉さんは口元に手を当て、赤い顔のまま扉を閉めた。


「ふかふかにゃあ♪」

「わーい♪」

 

 琥珀と稲姫はさっそくベッドにダイブしている。


「こらこら。一応、身体を洗ってからにしような」


 アレンは二人にそれとなく注意するが、


「うちは気を操作して綺麗にしてるにゃ」

「わっちも魔素を操作して綺麗にしてるでありんす」

 

「ずるいぞお前達だけ! そんな便利なことができるなんて!」


 アレンは思わず抗議する。


「ご主人もできるにゃ。うちの力を使えるし」

「わっちのも。試してみるでありんすよ」


「え、ほんとか?」


 琥珀と稲姫に言われるまま、アレンは試してみる。


――魔素操作の方が慣れてるから、こっちで。


 周囲の水属性の魔素をまとわりつかせる感じで身体をぬぐう。密度が高くなり薄く水色に輝く流れが、服や身体の表面を駆け巡る。


 その後、火属性の魔素と風属性の魔素を適度にまとわりつかせ、乾燥させる。


――凄く清々しい感じがする。自分の身体を見回すと、汚れも落ちているようだ。


「す、すげぇ! 風呂要らずじゃないか!」

「でも、うちはお風呂も好きにゃ♪」

「わっちも♪」



――そんなこんなで、アレンはまた一つ有用な技能を手に入れた。


――宿屋の食堂――



「お魚にゃあ!」


 部屋を出て、夕食を食べにアレン達は食堂に来た。――既に店の人達の間でうわさになってるのか、すれ違う店員さん達が顔を赤らめ、そっぽを向いてしまう。


 琥珀への約束通り、夕食はお魚メインのメニューにした。琥珀が喜んでくれているが、料理自体が美味しいので、アレンや稲姫としても満足だ。


「主様、明日はどうするでありんすか?」

「明日はエクスプローラー協会に行くよ。推薦状があれば期間外でも試験を受けられるらしいから、協会の人に話を取り付けるつもりだ」



――そう。この推薦状は、卒業試験でアレンがエーリッヒさんと戦った後に、エーリッヒさん達“青ノ翼”が理事長を通じてアレンに渡してくれたものだ。あの人達のご厚意に感謝だな。

 

――部屋内――



「じゃ、俺はソファーで寝るから。二人はベッドを使ってくれ」


 夕食を終え、三人は部屋に戻ってきた。受付の時ああは言ったものの、三人で一つのベッドはアレンも気恥ずかしく、二人にベッドを譲るつもりだったのだが――


「ダメにゃ! ご主人も一緒に寝るにゃ!」

「主様、明日試験でありんすから、ちゃんとベッドで寝ないとダメでありんす!」

 

 アレンは二人により強引にベッドへ拉致された。――稲姫に正論を言われてちょっとへこむが、その通りだなと思い直し、気恥ずかしさを振り切ることにした。


「わかったわかった! 旅で疲れたし、みんなでゆっくり寝よう」

 


――明かりを消し、三人一つのベッドでゆっくり休むのだった。



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