【第二部】第四章 敵の存在
――リムタリスへの街道にて――
村でギルド“青ノ翼”の三人と別れたアレン一行は、首都リムタリスへの道を進む。
「いい人達だったな」
「仲良くなれそうにゃ♪」
琥珀も気に入ったみたいだ。
「主様……探してる女の子ってどんな子でありんすか?」
稲姫が真剣な顔でアレンに問う。
アレンが“青ノ翼”の三人に言った、エクスプローラーになる目的――“ある少女を探す”というのが気になっているのだろう。
「二人にはまだ話してなかったか。――金髪のロングヘアーで、碧眼の女の子なんだ。知ってるか?」
「う~ん、うちは知らないにゃ」
「……」
琥珀は知らないらしいが、稲姫が黙り込む。訝しんでアレンが聞く。
「稲姫、何か知ってるのか?」
「知ってるでありんす。でも、今は答えられないでありんす」
辛そうな顔で稲姫が言う。
「どうして?」
「それが、その子との約束でありんすから……」
「わかるように言ってくれないか?」
つい語気が荒くなってしまう。稲姫の顔はとても辛そうだ。
「言ったら、主様はきっと無茶をするから。今はまだ、言えないでありんす」
「今はまだ? どうすれば教えてくれる?」
稲姫は考えながら、慎重に言葉を紡ぐ。
「主様がもっと――今よりもっとずっと強くなって、あいつらを倒せるとわっちが思えるようになったら……」
「あいつら……か。障害になる敵がいて、そいつらは今の俺よりも、ずっと強いってことか……」
アレンは唇を噛む。稲姫と琥珀の力を手に入れても、それでも足りないのか……
「もしかして、前の襲撃者と関係があるのか? 仮面……そうだ、前の襲撃者達も、過去に稲姫を襲った奴も仮面を被ってたって言ってたよな?」
稲姫がうなずく。
「たぶん、この前わっちを攫いに来た仮面の奴らも一味だと思うでありんす。今度はもっと強いのを――もしかしたら、あいつを送り込んでくるかもしれないでありんす」
そこまで言うと、稲姫は顔を上げ――
「主様! わっちも強くなるでありんす! だから主様も、もっと強くなって!」
本気の稲姫がそこにいた。
「そのつもりだ。――また奪われてたまるか。……あれ? 俺は何を言ってるんだ?」
アレンは自分の内から自然と湧いて出てきた言葉に戸惑う。
「うちも強くなるにゃ! ――もっともっと!!」
琥珀がアレンに抱きついてきた。
――稲姫は、そんなアレンと琥珀を嬉しそうに見つめるのだった。




