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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
【第二部】“旅立ち”編
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【第二部】第二章 宿屋での再会 

――街道沿いの村にて――



「わぁ……主様、畑があるでありんすよ!」


 学校のある都市ドクトリナを出て首都リムタリスを目指し北上していた俺達は、街道沿いにある村に立ち寄っていた。


 稲姫の言う通り、村には畑がいくつもあり、今も村人が畑仕事にいそしんでいた。ちなみに、稲姫には耳としっぽを隠してもらっている。


「おや、見ない顔だね。旅の方かな?」


 村人がアレン達に声をかけてきた。


「はい。ここから南にあるドクトリナから来まして、リムタリスを目指してるところなんです」

「そうかそうか。まだ先は長いからね。ゆっくりしていくといいよ」


 村人は宿の場所を教えてくれた。


「ご親切にありがとうございます」

「いいよいいよ。大したことじゃない」



――村人にお礼を言い、アレン達は宿に行ってみることにした。


 

 宿屋までの道中、走り回り遊ぶ子供や畑仕事をする村人を横目に見る。


「平和な村だな」

「わっちのいた神社の近くにあった村と、どこか似てるでありんす」


 見ると、稲姫が懐かしそうな、そしてどこか寂しそうな顔をしていた。


 稲姫の言う村はもう既に無いだろう。過去、()()()()()()()()()謎の集団に襲われたと稲姫から話を聞いている。その時に村人は稲姫を逃がしてくれ、大事な()()()()も稲姫を守って亡くなったと……。



 アレンは稲姫の頭を優しくなでる。稲姫はくすぐったそうに、なでられるままでいた。


――宿――



「いらっしゃいませ! お二人様ですか?」

「はい、部屋は空いてますか?」


 受付のお嬢さんが帳簿を確認して言う。


「はい、空いてますよ。ご宿泊ですか?」

「はい」

「では、部屋までご案内しますね」


 アレンと稲姫、琥珀は案内に従って部屋まで行った。


「夕飯はお持ちしましょうか? 食堂もご利用頂けますが」

「せっかくなので、食堂で頂きますね」

「かしこまりました。では、準備ができましたら呼びに来ますね」


 そう言うと受付嬢さんは仕事に戻って行った。


――琥珀の身体が光に包まれる。


「ん~……、着いたにゃあ♪」


 人化した琥珀がすぐさま布団にダイブした。


「あ、琥珀。宿は二人分で取ってるから、宿の中では獣化しててくれな? 部屋の中でならいいけど、人が来たら頼むな」

「むぅ……残念にゃ。でも、今はゴロゴロするにゃ♪」


 そう言うと、楽しそうに布団の上でゴロゴロし出す。稲姫も一緒になってはしゃいでいた。



 ドアをノックする音が聞こえる。


「お夕飯の準備ができましたので、よろしければ食堂にいらしてください」

「はーい!」


 呼びに来た受付嬢さんに従って、アレンと稲姫、再び獣化した琥珀は受付嬢さんに連れられて食堂に移動する。食堂には、既に先客がいた。あれは――



「……あ、来たよ?」

「待ちくたびれたぜ」

「ゆっくりしてただけじゃないか」


「一昨日はありがとうございました。……確か、“青ノ翼”のエーリッヒさんですよね」


 アレンは一昨日、卒業試験で現役エクスプローラーとの実戦を行った。その時相手をしてくれたのが、ここにいるエーリッヒさんなのだ。


 エクスプローラーは無所属の個人で活動する者もいるが、ギルドに所属するのが一般的だ。


 ギルドには“クラス”という等級区分があり、実力や実績により、ふさわしいものが協会から与えられる。


 クラスが高い程、協会から与えられる物資や資金の援助が多くなり、皆が目指すことになる。


――クラスは上から順に、


 “パープル”

 “ブラック”

 “プラチナ”

 “ゴールド”

 “シルバー”

 “ブロンズ”


 の6つがある。しかし、“パーブル”は過去現在を問わず、極わずかの例外的存在であり、現実的なトップは“ブラック”となる。


 エーリッヒの所属するギルド“青ノ翼”はプラチナクラスで、実質的に上から二番目の上位クラスなのだった。

 


「うん。君がリムタリスを目指すならここに立ち寄ると思って、待ってたんだよ」

「ここでの用事のついでだけどな」

「……ゆっくりできた」


 ご飯を食べながら、エーリッヒの仲間も続けて言う。


「俺はラルフ。エーリッヒと同じ、“青ノ翼”に所属してる」

「……私はレイン。右に同じ」


 ガタイのいい偉丈夫と、寡黙そうな銀髪少女がアレンに自己紹介する。


「俺はアレンです。“推薦状”、ありがとうございました」


 そう言いアレンは頭を下げる。そう。あの戦いの後、理事長を通じてエクスプローラー試験の推薦状を“青ノ翼”から受け取っていた。これがあれば、期間外でもエクスプローラー試験を特別枠で受けられるのだ。


「いいよいいよ。アレは僕らが勝手に渡した訳だし」

「エーリッヒから相談を受けてな」

「……気にしないで」


 気のいい人達だった。アレンも自然、頬が緩む。


「君に興味があってね。どうだい、少し話せないかな?」

「はい。それは大丈夫です」

 


――エーリッヒに誘われるまま、アレンと稲姫は三人と同じテーブルに着くのだった。



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