表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
【第一部】“エクスプローラー養成学校”編
53/494

【第一部】第四十四章 別れ、そして旅立ち

――闘技場――



「しょ、勝者! アレン!!」

 審判がアレンの勝利をアナウンスし、場内が大歓声で埋まる。


「アレン! やったぁ!!」

「よっしゃあ!!」


 エリスやカールが快哉(かいさい)(さけ)ぶ。稲姫や琥珀、クレアも観客席で大喜びだ。アレンは場内の観客席に手を振り声援に応える。


「参ったよ。一体、君は何者なんだい?」


 そう言いながら対戦者のエーリッヒが手を差し出してきた。


「ちょっと訳ありな、()学生ですよ」


 ぼかしながらアレンも握手に応じた。



「それではこれにてアレンさんの卒業試験、現役エクスプローラーとの実戦は終了となります。エーリッヒさん、ありがとうございました! みなさんも拍手でお送りください!」


 退場するエーリッヒを場内の観客が拍手で送る。間もなくして、ナタリアがアレンに近づいてきた。


「アレン君! 凄いじゃない! こんな凄いだなんて思わなかったわ!」


 興奮したナタリアがアレンの手を握り上下にブンブン振る。


「いやぁ、何とかなってよかったです。――これで卒業試験も終了ですよね」


 場内の観客席の一角からプレッシャーを感じ、急ぎ要件をすませることにする。


「そ、そうですね。今日はお疲れさまでした。結果は明日、理事長室で伝えますので、明朝職員室に来てください」


 こほんと咳払いし、ナタリアさんは試験の終了を告げる。



――なんとか無事終わったなぁ、とアレンは安堵するのだった。



「とんでもない奴だったな」


 退場したエーリッヒを迎え、同じギルド――“青ノ翼”のラルフが声をかける。


「いやぁ、惨敗だよ。面目ない」


「……アレは仕方ない。()()()、何かわかった?」


 同じく“青ノ翼”のレインがエーリッヒに問う。エーリッヒはアゴに手を当て、


「それがさっぱりなんだ。少なくとも僕は知らない。たぶん、デバイスにも登録されてないんじゃないかな?」


「……そう」

「理事長から学生の相手をしろと言われた時は気が進まなかったが、来たかいがあったな」


 レインが残念そうに、ラルフが楽しそうに言う。


「ねぇ、相談があるんだけど」



――エーリッヒは、レインとラルフにある提案を持ち掛けるのだった。


――寮内アレン自室――



「はぁ~っ……疲れた」


 部屋に戻ると部屋着に着替え、アレンはベッドにダイブする。


「ご主人、お疲れ様にゃ」


 人化した琥珀がアレンの背に乗り、マッサージしてくれる。


「あ、そこ、気持ちいい……」


 グッ、グッと強めの指圧がとても気持ちいい。


「ずるいでありんす! わっちもわっちも!」

「ごふっ!」


 人化した稲姫も乗っかってきた。勢いがよかったためアレンの肺から空気が漏れる。


「稲姫ちゃん、ご主人が辛そうにゃ」

「はーい!」


 笑顔で背から降りて稲姫もマッサージをしてくれる。


「あ~……極楽……」



――コンコン ガチャッ


「アレン! お祝いにお菓子を作ってきたわよ!」



――現場をエリスに見られて修羅場になったのは言うまでもない……。


――明朝、理事長室――



「文句なしの合格です。我が校始まって以来の最高成績ですよ」


 理事長が柔らかな笑顔でアレンに合格を告げ、卒業証書を渡してくれた。


「略式でごめんなさいね」

「いえ、気にしてませんので」


 申し訳無さそうな理事長や校長、教頭、ナタリアに見守られながら、略式に卒業式を済ませる。


「それと、ギルド“青ノ翼”からこれを預かってます」


 理事長から封筒を手渡された。


「これは?」

「“推薦状”ですよ。これがあれば、試験期間外でも、エクスプローラー試験を特別枠で受けられます」


 アレンは目を見開く。


「でも、どうして私にこれを……?」


「あなたのことが気に入ったからみたいですよ。彼らを呼んだ私が言うのもなんですが、まさか、勝つとは思いませんでしたよ」


 そう言うと理事長はコロコロと楽しそうに笑う。アレンとしては気恥ずかしいが――


「ありがたく頂戴致します」



――期せずしてアレンは、エクスプローラー試験特別枠の“推薦状”を入手するのだった。


――職員室の片隅――



「アレン君、これ、私の連絡先」


 ナタリアから、連絡先の書かれた紙を渡された。


「え? でもどうして……」

「べ、別に変な意味は無いわよ? ……困った時は連絡を頂戴。できる限り力になるから」


 ナタリアは赤い顔でそっぽを向いている。


「ありがとうございます。なるべくご迷惑をお掛けしない様にしますが、困った時は頼らせてもらいますね」


「困ってなくても連絡してきていいからね……その、別のことでも」

「え……?」

「な、何でも無いわ! じゃ、じゃあ、元気でね!」


 ワタワタするナタリアに背を押され、職員室を後にした。


――校舎入口――



「あ、アレン君!」


 クレアに呼び止められた。


「あの時はごめんね。私、操られてたみたいで……」

「そうみたいだね。でも、悪いのは襲撃者達だし。……それに、俺達を襲うために君が利用されたのなら、謝らなきゃいけないのはむしろこっちだな。ごめん……」


 アレンはクレアに頭を下げる。


 あの後からクレアのことは注意深く観察していたが、特に怪しいところは無かった。おそらくは本当に操られていただけなのだろう。


「こ、これ、私の連絡先……」


 クレアからも連絡先の書かれた紙をもらった。ナタリアの時と同じように感謝して受け取った。


――寮内アレン自室――



 その晩は、エリスとカールがお別れ会を開いてくれた。稲姫と琥珀の人化を外で見られたくないため、いつもの寮内アレン自室で食事会を開く。


 奮発した食材で、エリスが腕によりをかけて料理をふるまってくれた。カールは贈り物として、有名な鍛冶師が打ったという双剣をくれた。


「ありがとう。でも高かっただろ」

「いいってことよ。まぁ、お前にはすぐに物足りなくなっちまうかもしれないけどな」


 アレンは鞘から剣を抜き、その見事さに感嘆する。


「大事にするよ」

「みんな~、ご飯できたわよ~」


 エリスの呼びかけに応じ、皆でワイワイと食事をとるのだった。


――翌日、街の入口――



「じゃあ、行くよ」


 早朝、俺と稲姫、琥珀は、エリスとカールに別れを告げる。


「すぐに卒業して追いつくからね」

「そうだぞ。次に会う時は驚かせてやるからな」


 エリスとカールがそう言ってくれるが――


「危ない旅になるだろうからな。俺のことは気にせず、二人は自分のやりたいことをやってくれ」


「うん。だから追いかけるのよ」

「右に同じ」


 ニシシという感じで笑う二人をまぶしく思い、アレンは最後に感謝を告げる。


「ありがとう。お前達に出会えてよかったよ」

「ありがとう!」

「ありがとうにゃ!」


「またね!」

「またな!」



 そうしてアレン、稲姫、琥珀は街を後にした。まずは“エクスプローラー”になることを目指して。



――ここから、アレン達の旅が始まる……。



<第一部・完>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ