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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第七部 “和国・北洲の戦い”編③
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【第七部】第十二章 人質救出(牧場)②

――牧場内――


 牧場の中に踏み込むと、思わず鼻をつまみたくなるようなすえた匂いが鼻腔に流れ込んでくる。だが、そんなことを気にしている余裕などない。


 牧場内では、小鬼達が今も女達をはずかしめている。ようやくこちらに気付いたようで、こちらを振り返り驚きから腰を抜かす小鬼が何体もいる。


 逆に、女の中にこちらを振り返る者は一人もいない。人間、妖獣を問わずに。生気は感じられず、ただだらんと力を抜き、小鬼達のいいようにもてあそばれていた。


――<千里眼>で何度も見ていた光景とは言え、それを目の当たりにすると神楽の中にドス黒い気持ちが芽生えた。



「シネ」

「――ごギャッ!?」


 こちらに注意を向けない程生殖行為に夢中になっている小鬼。神楽は無造作に近付くと小鬼の首をわしづかみにして引っ張り上げそのまま握り潰した。首の骨を折る確かな感触があった。その小鬼の死体を誰もいない長屋の隅にぶん投げると、神楽は手当たり次第に小鬼を殺していった。


「わ、私達も続くぞ!!」

「いたぞ! ――おい、まだ生きてるか!?」


 牧場の中のあんまりな光景に一瞬呆けてしまっていたのだろう。百合が声を震わせながら部下共々小鬼の誅殺、人質の救助にあたる。


 黒悠は同族の姿を長屋奥に見つけると、仲間と共に黒翼をはためかせ一直線に飛んでいった。


 神楽は――


「ごッ!?」

「ぺきゃ」

「ぷぁ」


 小鬼達の悲鳴にすらならない断末魔を次々に上げていく。抵抗の意思を失っていようが関係ない。


 これだけのことをしたのだ。

 これだけのことをしでかしたのだ。


――許す気など、端から毛頭なかった。


 苦しませて殺してやりたい。でも、その時間すら惜しい。


 人質の救助が最優先だ。


 救助? ここまで辱しめられた女性にとって、今ここでの解放は本当に救いになるのだろうか?


――色々な思いで頭の中はグチャグチャだ。


 だけど、今はそうすべきと判断した救助活動のことだけを考える。余計な想いは動きを、思考を鈍らせ隙を生む。


 妖獣、人間を問わず神楽は皆を助ける。だが、その中に小鬼は一体たりともいない。


 小鬼達を手当たり次第に殺していく。産まれたばかりのまだへその緒がつながっているものだろうと一切躊躇はしない。


 赤子に責任はない。だから殺すのはおかしい。


 でも、それが自分の――御使いの一族の信念に反するものであったとしても、神楽は自分の内から無尽蔵にわき出る殺戮衝動に、ただただその身を委ねた。

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