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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
【第一部】“エクスプローラー養成学校”編
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【第一部】第三十九章 あなたには卒業してもらいます

――理事長室――



「さて、じゃあさっそく本題に入りましょうか。アレン君、貴方には、本校の卒業試験を受けてもらいます」


 理事長室に呼び出されての第一声がそれだった。この場には、アレンと理事長以外にも、校長、教頭、事件後に立ち会った女性教官が席についている。


「いきなりですね。理由を伺っても?」


 アレンからしたら、いきなりこんなことを言われて「はい、わかりました」と頷けない。


「成績優秀で将来を有望視される生徒には、学校側から勧めて卒業資格を早くに与えることもあるのですよ。より早く活躍してもらうためにね」


 理事長はそんなことをつらつらと言う。だが――


「自分で言うのもなんですが、俺――いえ、私より優秀な生徒はいますし、魔法実技についてなら私より上は多くいますが」


 ミハエルとか、学年首席だしな。


「自分を卑下する必要はありません。あなただって優秀ですよ。最近では、魔法の実技成績も上がったそうですね」


 稲姫の<魔素操作>を試した時のことか。……でも、それにしても違和感がある。ここはストレートに聞くか。


「もしかして、この前の事件が関係してますか?」


 アレンがそう尋ねると、理事長とは別の席から「ガタッ」と音が鳴る。事件の後に立ち会った女性教官だった。


 見ると今は平然としている。さっきは図星をつかれて動揺してしまったのだろう。アレンはため息をつき――


「――そういうことですか。確かに学校側として、こんな厄介者を抱えていたくはないですよね」


「あ、アレン君! 君は誤解している! 私達はただ君の――」


 教頭が席を立ちあがりまくし立てようとするが――


 理事長が手を上げて遮った。



「どうやらあなたをみくびっていたようですね……。そうね、腹を割って話しましょう。あなたの考えた通りですよ」


 理事長は近くに置いていた茶で喉をしめらし――


「あなたは、自分を襲った者達があれからどうなったか、聞いていますか?」


 そうアレンに問いかけてきた。


「拘束して自警団に引渡しましたが、その後のことは何も――」


 隠すことでも無いので正直に答えるが――


「国の犯罪者収容施設に送られることになってましたが、その前に――自警団の収容施設に入っている時に、()()()()()()()()()()

 

 アレンは思わず目を見開く。


「調べたそうですが、原因や手段はわかっていません。外傷や薬物反応も無く、自殺か、他殺かもわからないそうです。――ですが、収容した晩の真夜中、その者達は一様に亡くなりました」


 そうして理事長は席を立ち、後ろの窓の方に数歩歩くと、かけてある日差しよけをめくり、窓外を見ながらアレンに告げる。


「国もこの件を重く見ています。相手は、私達の考える以上に危険な存在です。――私達には、学校の生徒達を守る義務があります」


 理事長の見る窓の外には、実技訓練中だろうか、多くの生徒が訓練に励む姿があった。


「おそらく、あなたに非はないのでしょう。ですが、こちらの提案通り、卒業して学校を出ていってもらえませんか?」


 その言葉を最後に、しばし場を沈黙が支配する。やがて――


「わかりました。退学ではなく、卒業の形にしてもらえるとのことですし、お受けいたします」


 アレンがうなずき返す。


「おお! よく決断してくれた! いや、我々も本当はこ――」

「卒業試験は急ですが、明日、受けてもらいます。ナタリアさん、試験官としてお願いしますね」

「承知しました」


 教頭の言い訳に割り込み、理事長が女性教官――ナタリアさんに指示を出した。



 理事長室を出て、職員室の片隅でナタリアさんから明日行われる卒業試験について指示を受ける。


「明日は、登校したら教室にはよらず、職員室に直接来てください。実技試験もありますので、朝食は抜かないようにね」

「承知しました」


 アレンはこれで用が済んだとばかりに職員室から出ていこうとするが――


「……本当は、生徒を守り育てるのが学校や教官の務めなのに、ごめんなさいね……」


 下唇を噛みながら、ナタリアさんが無念そうに言う。


 アレンは一瞬呆気にとられるが、すぐに気を取り直し――


「ナタリアさんや学校側が悪いわけじゃないですよ。それに、卒業させてもらえるなら、俺も文句はありません」


 そうフォローするが――


「ア、アレン君!? 教官と呼びなさい! まったくもう!」


 ナタリアさんは顔を真っ赤にして扉に向かい歩き出す。アレンもついていった。


「じゃあ! 明日は遅刻しないようにね!」



――ナタリアさんは扉を開けると、赤い顔のままアレンを職員室の外へと送り出すのだった。



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