【第六部】第百七章 烏天狗達④
――森――
「俺達は、馬頭の群れに組み込まれ西にある後城から東にある富央城とやらに向かっているところだった。里の女達は後城にとらわれている」
「牢屋にでも入れられてるのか?」
「わからない。後城に着くなり、女達は俺達から引き離された」
「じゃあ、探すとこからか……。協力する。方角を教えてくれ」
「? どういうことだ?」
頭に疑問符を浮かべる烏天狗達。さしもの八咫も例外ではない。
「俺は<千里眼>という力を使える。これも借り物の力だが、遠く離れた場所をも第三の眼をもって視ることができる。だから、お前達の人質がどこにいるか探してやるよ」
稲姫の力だということは伏せ、神楽は八咫達にそう提案をもちかけた。
◆
「バカな……」
「嘘だろ? そんなのズルじゃねぇか!?」
黒悠と黒磨が戦々恐々としている。八咫は、さもあらんと言った感じにうなずいている。
「それでか……。お前が眼を向けていないのに監視されている気配を感じるのは」
「気配って……。いや、まぁ、確かに今も視てるけど。鋭すぎだろ……」
神楽としては、八咫の勘の鋭さの方が恐ろしい。
(稲姫はこのままここを視ててくれ。俺は視点移動させて後城を探す)
(わかったでありんす)
稲姫に<護符通信>で断りを入れ、神楽は早速西に視点移動を開始する。八咫が適切に誘導してくれたため、そう時間もかからずに後城が見つかった。
「ここが後城か……。姫様が言っていたように、綺麗な水の都だな」
「そんなことはいい。馬頭の群れは俺達を含め外縁部に住まわされていた。外から探してくれ」
「はいはいっと……。ん? 見張りが立ってる。これかな?」
神楽は、なんとはなしに、それっぽい長屋に目をつけ屋内を覗き込んだ。
――そして、中で行われていた所業に絶句する。




