【第六部】第九十四章 そして滝壺に
――滝壺の手前――
「じゃ、僕らはこれで。――君達に負担を押し付けて申し訳ないと思ってる。でも……頼むよ」
「気にするな。ここまでありがとう。助かった」
「みんな、また生きて会いましょう!」
「当然じゃ。其方らも気を付けてな」
神楽達は護衛をしてくれた修や咲達と滝壺の手前で別れた。崖上に上がる道があると聞いていたが道と言う程立派なものではなく、式神テンクウの術を使った強引な方法だった。
皆がまとめて砂の幕に包まれると、それが崖にくっついて上に登っていったのだ。
「こりゃまた……」
「……陰陽師が、式神がいないと無理」
神楽の隣で見ているレインが興味深そうにそうつぶやく。魔法でやるならどうするかを考えているのかもしれない。
「ここで立ち止まっていても仕方がない。敵に見つかる前に早く滝壺に入るべきだ」
「そうだな。じゃ、行こうか」
蛟の指摘にうなずき、神楽達は滝壺内へと歩を進めた。
◆
「はぁあ~……。大瀑布ってこういうのを言うんだろうな」
「立派ではないか。水も澄んでおるし」
<千里眼>で事前に見て知っていたが、滝壺は立派だった。ドドドドと絶え間なく幅広の滝は流れ落ち、滝壺の水深もかなり深そうだ。水は綺麗で普通に飲めそうだ。蛟の機嫌もどことなくいい。
滝まで近付くと、その裏へと向かった。神楽達の待機予定場所だ。入ってみると、広い空洞があった。
「滝の勢いがスゴくて外からは見えないし、空洞は広いし。文句無しだな!」
期待していた以上のものだった。
「滝壺の深さを調べてくる」
蛟が意気揚々と滝壺にダイブする。皆は、空洞内に持ってきた荷を置いた。
「後は待ちだな。みんなは休んでてくれ。俺は法明に報告する」
無事到着の報告を法明に入れたら、さしもの法明も安堵したようだ。どことなく声音が明るい。また、崖上の方も大きな問題なく無事到着し、布陣を整えているとのこと。
報告を済ませ通信を切ると、神楽は皆の元に歩みよった。
「後数刻のうちに馬頭軍がこの前を通るだろう。法明から合図が来たら、予定通り俺と蛟で敵軍に奇襲をしかける。みんなはその援護を頼む。まだ少し時間はあるから、ゆっくりしててくれ」
そうして神楽も地面に座り、身体を休めながら<千里眼>での監視に専念した。




