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神の盟友  作者: 八重桜インコ愛好家
第六部 “和国・北洲の戦い”編②
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【第六部】第七十五章 注意

 富央城を正門から出て空香溪谷への遠征軍が出立する。進路は西。山の斜面を下っていく。


 行軍は、侍部隊を先頭に縦列で進んでいく。これは、陰陽師の力を温存するために他ならない。


 陰陽師部隊は主に護符を用いるが、誰でも使える便利な代物である代わりに、一度使うと再度力をこめるまで使えなくなる。


 <式神>という召喚術も有しているが、これには時間制限がある。その時間はまちまちだ。陰陽師それぞれの能力、そして、召喚する<式神>との相性で変わってくる。


 法明や衛のような陰陽師最強クラスであれば、召喚数を一体だけ、それも良相性の<式神>にするという条件をつければ一日中召喚し続けることもできる。


 だが、他の者はそうもいかない。いざという時、時間制限で召喚できませんということにもなりかねない。


 だから、なるべく力を温存するため、行軍中の外敵排除には、侍部隊が当たっている。


 侍部隊は主に気と刀で戦うため、陰陽師のような温存は考えなくていい。もちろん、気を使いすぎれば体力同様、休息による回復は必要となるが、それだけだ。陰陽師よりは軽い。


 そうして、総勢千五百からなる行軍は西に進んでいた。



「ちゃんと道があるな」

「元々、西の後城とやらにも城はあったそうだからな。その往来で整備されたのではないか?」


 神楽達は、行軍の中程についていた。法明はそのいくらか後ろについている。


 一応は、神楽達の戦力をなるべく隠しておくためでもある。


 実は、出立直後、神楽は法明に呼ばれ、軽く叱責されていた。



『昨日は、仲間を連れて狩りに出ていたようだな』

『ん? ああ、うん。誰かに聞いたのか?』

『城で噂になっていた。お前達が大量の獲物をとって帰って来たとな』

『食糧も十分とは言えないからな。手が空いてたし、できることをしただけだよ』


 神楽としてはただ皆のために行動しただけで、法明からこの話をされたのは感謝のためかと思いそう答えたのだが、法明の表情は険しい。


『お前達は、私達に取っての“切り札”なのだ。不用意な行動は謹んで欲しい』

『なんだよ。邪魔だったってのか?』


 神楽としては面白くない。てっきり他の皆からと同様に感謝されると思っていたのに水を差された気分だ。


『いや、感謝はしているが、戦に備えることが最優先だと言っているのだ。お前達の力は、できる限り秘匿したい。――城の外は、我々以外の勢力がいつどこにいてもおかしくない。ひょんなことから情報がもれることなど、これまでにも多々あった』


 法明は感謝しつつも注意を入れようとしているのは、神楽にも分かった。少し不用意だったかもしれないと自身の行動を思い直した。


『そうだな……悪い。でも、そんな厳しいのか? 少し出ていただけだぞ? それに、俺は力をほとんど使ってなかったし。別行動していた蛟にも、できる限り力は使わないよう言っておいたし』


 そう。一応は注意していたのだ。神楽、稲姫、蛟辺りは力が特殊過ぎる。隠しておいた方がいいとは思っていたので、狩りはその他のメンバーが主体で行った。


――もちろん、不測の事態に会えば、迷いなく力を使うつもりはあったが。


『鬼の中には、頭のめぐりの良すぎる者もいる。――鈴鹿御前だったか? 捕虜達の言っていた名だな』

『ああ。女の鬼だっけか? そんなか。俺はよく知らないが、随分やっかいみたいだな』

『そこは認めざるを得ない。奴の洞察力、知略は我々を優にしのぐ。だから、なるべく情報は与えたくないのだ』

『わかった。今後は注意する。それと、後で琥珀達にも伝えとくよ。狩りは続けるつもりだと思うから』

『頼む。本当は外に出て欲しくないが、狩りを通して民衆との距離を縮めていることも理解しているし、食糧の確保にも感謝している。少なくとも、本命として頼りにしてる力は使わないように伝えて欲しい』

『わかった』



 そんなことがあり、神楽達はなるべく力を見せずに済むよう、軍に囲まれながら行軍しているのだった。


 

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