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【第六部】第五十三章 人質①
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烏天狗達は、椿達の言う通り、元々は西の山奥に住んでいた。
集落は小さいながらも、互いに助け合いながら平和な日々を送っていた。
そんな状況が一変したのは一月前。
牛頭との富央城攻略競争に負けた馬頭は、群れを率いて後城に帰還する。その途上、配下から烏天狗の噂を聞き、群れを率いて集落を取り囲んだ。
富央城攻めで消耗した戦力補充のためだった。
おり悪く八咫達は狩りに出ており、さらには、山菜を取りに集落を出ていた母子が馬頭達に捕まってしまった。
――要は、人質にされたのだ。
そして、馬頭はまだ幼く泣き叫ぶ娘を手につかみ集落に呼ばわった。
『こいつを殺されたくなかったらおとなしく従え』と。
八咫達が集落に戻ってきた時には全てが遅かった。
元々、固い絆で結ばれた烏天狗達だ。
皆、人質でおどされ抵抗できずに捕まっていた。そこには、八咫の母――黒雨や弟――黒夜の姿もあった。
そして、それは八咫達も例外ではない。
家族、恋人、友達が拘束されていては手出しができなかった。
そうして、八咫達烏天狗は後城へと連行されたのだった。
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